TRAVEL

美食とアートが彩る中之島へ

ロイヤルな街あるきvol.1

 久しぶりに会う友人とは、落ち着いた場所で心に残る時間を過ごしたいと、ホテルでの食事をチョイスする人も多いはず。いつもより少し贅沢なランチを愉しんだ後は、ホテル周辺の美術館を訪ねたり、歴史的な趣を感じられる寺社仏閣や建築物を訪ねたりすることで、思い出はさらに深まります。

 「ロイヤルな街あるき」では、「美味しいお食事とともにホテル近隣を散策するプチ旅」のご提案です。

 今回はリーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションのグランメゾンと中之島に集まる個性豊かな美術館を、編集者・ライターの川嶋 亜樹かわしま あきさんがご案内します。

レストラン シャンボール

グランメゾンで味わう季節のコース

開放的な窓際が特等席。景色とともにゆったりと食事を満喫できます。

 積もる話をゆっくり楽しむために選んだのは、リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション29階の「レストラン シャンボール」。店内へ一歩足を踏み入れると、大きな窓いっぱいに大阪市街の眺めが広がります。

 宮殿風のインテリアに、きらめくシャンデリア。フランスの古城・シャンボール城にちなんで名付けられたこの店は、1973年の誕生以来、「食のロイヤル」とたたえられるホテルの美食の歴史を象徴してきたグランメゾンです。歴代料理長が受け継いできたレシピには、“フランス料理の父”と呼ばれるエスコフィエの流れをくむ、リーガロイヤルホテルならではの伝統が息づいています。

 現在、厨房を率いるのは10代目シェフの田中 貴典たなか たかのり氏。パリの三ツ星レストランなどで研鑽を積み、「伝統と革新」をコンセプトに、半世紀にわたり受け継がれてきた味を礎としながら、素材の背景や物語を大切にしたひと皿を生み出しています。

季節の食材を使ったランチコース「ムニュ デジュネ」¥12,650より。2品目は「シマアジのマリネと泉州水なすのミルフイユ仕立て トマトのクリアなエッセンスとともに」。泉州水なすとトマトのみずみずしさが爽やかに重なります。

 ランチコース「ムニュ デジュネ」は、旬の食材で魅せる全5品に、食後の飲み物と小菓子が付く充実の内容。季節ごとに料理が替わり、その時季ならではの味わいに出合えます。

 夏のコース(~2026年9月7日まで)で提供されるのは、大阪特産の泉州水なすをはじめ、地元の食材も登場。繊細なアートのような盛り付けと、口の中で幾重にも広がる味わいに驚かされます。次はどんな料理だろうと、ひと皿が運ばれるたびに期待が高まりました。

3品目は「スズキと夏野菜のタンバル仕立て フヌイユのコンポートとスープドポワソンのソース」。魚介の旨みを凝縮したソースが、淡白なスズキと夏野菜を引き立てます。

 3品目では、色鮮やかなソースをテーブルで仕上げる演出も。香りがふわりと立ちのぼった瞬間、「きれい」「おいしそう」と声が重なります。美しい料理を前にすると、会話も自然と弾むもの。窓の外の景色を眺め、ひと皿ごとの驚きを語り合いながら、デセールまでゆっくりと流れる時間を満喫しました。

西陣織あさぎ美術館 大阪・中之島館

日本最古の伝統工芸西陣織と日本伝統文化の体験型ミュージアム

 ランチの余韻に浸りながら向かったのは、ホテルに着いた時から気になっていた「西陣織あさぎ美術館 大阪・中之島館」。2026年5月、京都・四条烏丸の本館、京都・丹後クリエイティブセンターに続く3館目として、ホテルの玄関横に誕生しました。20時まで開いているので、仕事帰りにも立ち寄れます。

俵屋宗達の風神雷神図屏風。無数の糸で織り方を変え、日本画の質感までも見事に再現。

 美術館を手がけるのは、京都の塚喜商事株式会社あさぎ事業部。「平安時代から続く西陣織の技と美意識を残すため、現代にもなじむ“絵画としての西陣織”にも挑戦しています」と担当者。一般的な西陣織の4〜9倍の細かさで織る「1800口織ジャガード」と、純度99.9%以上の金箔・プラチナ箔を用いた糸で、名画を織でよみがえらせます。

開館記念特別展「黄金の織物展」(〜2026年11月29日)では、俵屋宗達や尾形光琳に代表される「琳派」のきらびやかな世界と、ゴッホやモネに影響を与えた「ジャポニスム」の美を西陣織で楽しむことができます。

 遠目には絵画そのもの。けれど近づけば、無数の糸の重なりへと姿を変えます。その精緻さに、思わず「これが織物?」と声が漏れました。「完成まで長いものでは1年半。図案、染め、織りと、専門職人による分業で、1800本の糸を1本ずつ結び直す工程もあります」と担当者。作品は、華やかな表情の裏に、気の遠くなるような手仕事を重ねた結晶です。

 驚かされるのは、展示作品のほとんどが購入できること。近年は、帯や打掛を子どもや孫のために手に入れ、普段はアートとして飾り、ハレの日にまとうという受け継ぎ方も増えているそうです。

 鑑賞するだけでなく、多彩な体験を楽しめるのも魅力です。花嫁衣裳にも使われる打掛の着装体験では、好きな柄の打掛を2点選び、西陣織や名画をモチーフにしたフォトスポットで撮影できます。袖を通すと、ずしりとした重厚な打掛の重みが伝わり自然と背筋が伸びました。

打掛着装体験¥6,600(所要時間20〜40分、受付時間10:00〜18:30)。着付け体験も用意されています。

 続いて、館内の茶室で茶道体験を。椅子に座る立礼式で、自分で抹茶を点てることもできます。香り高い抹茶をゆっくりと味わううちに、気持ちまで静かに整っていきました。打掛と茶道の体験は、どちらも事前予約がおすすめです。

茶道体験(立礼式)¥6,600(所要時間20〜40分、受付時間10:00〜13:00/16:00〜18:00)。京田辺産の無農薬抹茶を使用しています。
西陣織の織地を活用したオリジナルグッズ作り体験もでき、お出かけや旅の記念にもぴったり。 オリジナルクラフト体験¥2,200。缶バッジやヘアゴム、ペンやガラスの小瓶、キーホルダーの中から好きな3つを選べます。

 ショップには、額装作品や名刺ケース、シュシュなど、日常使いしやすいアイテムも。見る、まとう、作る、そして飾る。格式高いイメージのある西陣織を、もっと身近に楽しめる美術館です。

大阪中之島美術館

全作品が日本初公開。明治の関西を旅したスイスの画家

 ホテルを出て、川沿いの景色を眺めながら歩くこと約10分。黒い直方体が宙に浮かぶような外観が印象的な「大阪中之島美術館」に到着。2022年に開館した中之島のアート拠点で、吹き抜けの通路をエスカレーターで上がる時間も、展覧会への期待を高めてくれます。

 訪れたのは、展覧会「スイス絵画の異才 カール・ヴァルザー」(〜2026年9月27日)。その名にピンとくる人は、まだ多くないかもしれません。「生前は人気を集めながら、戦争の混乱の中で忘れられた画家です。近年、母国スイスで再評価が始まったばかり。本展は日本初の回顧展で、約150点の出品作はすべて日本初公開です」と担当者も意気込みます。

ヴァルザーの初期作品作《人形の乳母車と少女》1905年以前 新ビール美術館。童話作品に出てきそうな優美な線の奥に、どこか謎めいた気配が漂います。

 20世紀前半、スイスからベルリンへ渡り、優美な線と色彩で人気を集めたヴァルザー。作品の前に立つと、華やかで優美でありながら、どこか翳りを帯びた色彩に目が離せなくなります。

 なかでも興味深いのが、1908年に日本を旅していたこと。京都府の宮津をはじめ各地に滞在し、歌舞伎や祭りでにぎわう明治の日本を、鮮やかに描き残しました。よく知るはずの風景も、異国の画家のまなざしを通すと、初めて訪れる場所のように見えてきます。

日本滞在中に描いた歌舞伎や祇園祭。明治の街の熱気が、みずみずしい筆致で蘇ります。

 画家としてベルリン分離派の中枢を担う一方、舞台美術や本の挿絵、壁画まで幅広く手がけたマルチな才能も見どころ。1歳下の弟は作家のローベルト・ヴァルザーで、弟の著書のために描いた挿絵原画など、兄弟の共作も並びます。

 知らなかった名前に出合い、思いがけず心を奪われる。そんな発見をその場で語り合えるのも、気心の知れた友人とアートを巡る楽しさです。

展覧会の余韻を持ち帰れるオリジナルグッズも充実

 大阪中之島美術館の5階展示室では「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」(〜2026年9月27日)を開催中。

 リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションでは館内のレストラン・バーで、フェルメール作品から着想を得た期間限定メニューをご用意しています。

中之島香雪美術館

街なかの静寂で紐解く古美術の魅力

 さらに川沿いを歩いて「中之島香雪美術館」へ。中之島フェスティバルタワー・ウエストの4階にあり、テーマは街に居ながら山中の静けさを味わう「市中の山居」。扉をくぐると、都会の喧騒がすっと遠のきます。

 同館のコレクションを築いたのは、朝日新聞社の創業者・村山 龍平りょうへい氏。神戸・御影の旧邸に建つ本館に次ぐ2館目として、朝日新聞社発祥の地である中之島に2018年に開館しました。刀剣や書跡、絵画、茶道具など、日本と東アジアの多彩な古美術を紹介しています。

 所蔵する長谷川等伯筆「柳橋水車図屏風」が今春、新たに重要文化財に指定されるなど、コレクションへの注目も高まっています。

 自館の所蔵品を積極的に公開していく方針の第1弾として開催されているのが、現代作家の川上和歌子さんが手がけた約200羽のインコと鳥にちなんだ所蔵品を組み合わせた特別展「インコ イズ カミング! 香雪美術館コレクション×川上和歌子 〜ピコ&ピータといっしょに古美術鑑賞〜」(〜2026年8月30日)です。

現代アーティスト・川上和歌子氏によるインコたちが、古美術の世界へと誘います。

 色とりどりのインコを探すように展示室を巡れば、「難しそう」と感じていた古美術がぐっと身近に。「かわいい」と心が動くところから、昔の人の遊び心や自由な発想に触れられます。

 展覧会と併せて見ておきたいのが、村山龍平の歩みや美術への思いを伝える常設展示です。年表や映像、資料に加え、国指定重要文化財・旧村山家住宅の全景ジオラマや、洋館2階の居間を再現した空間などから、収集家としての美意識や暮らしぶりをたどれます。

御影では通常非公開の茶室「玄庵」を見事に再現。取材した日は特別展のインコが!

 その一角にある「中之島玄庵げんなん」は、御影の旧村山家住宅に現存する茶室「玄庵」を、飛石や灯籠を配した露地ごと原寸大で再現したものです。ビルの中とは思えない静かな佇まいに、しばし街の時間を忘れます。神戸・御影の香雪美術館は、施設設備の改築工事に伴い2028年秋まで休館中。その歴史や美意識に大阪の中心部で触れられることも、中之島館ならではの魅力です。

秋からはラ・トゥールら西洋絵画の名品が一堂に。

 秋には、東京富士美術館所蔵「魅惑の人物表現――人のかたち、心のもよう」(2026年10月10日〜12月20日)を開催。巨匠たちが描いた人物を通して、外見だけでは見えない心の内を読み解きます。訪れるたびに異なる作品やテーマに出合えることも、繰り返し足を運びたくなる理由です。

写真/濱田 智則

リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション
レストラン シャンボール

TEL 06-6448-0354(レストラン総合案内10:00~18:00)
大阪市北区中之島 5-3-68 イーストウイング29階

「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展
17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」コラボレーション

限定グッズをセットにした特別宿泊プランを販売中です。
さらに、館内レストラン・バーでは、フェルメール作品から着想を得た期間限定メニューも登場。
展覧会とあわせて、ホテル館内でもフェルメールの世界観をご堪能ください。

【DATA】
西陣織あさぎ美術館 大阪・中之島館
大阪府大阪市北区中之島5-3-68
リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション1階
TEL 06-6225-7137

 

大阪中之島美術館
大阪府大阪市北区中之島4-3-1
TEL 06-6479-0550
リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションより徒歩約10分

 

中之島香雪美術館
大阪府大阪市北区中之島3-2-4
中之島フェスティバルタワー・ウエスト 4階
TEL 06-6210-3766
リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションより徒歩約15分

―Navigator―

川嶋 亜樹さん

生まれも育ちも大阪の編集者・ライター。行政の広報紙や住宅情報誌、鉄道の沿線情報誌など、街の魅力を伝えるコンテンツの編集・執筆に幅広く携わり、現在は雑誌やWEBを中心に寄稿。2018年まで日本野菜ソムリエ協会に勤務し、西日本エリアの自治体の青果物プロモーション企画を担当した経験から、農業生産者や飲食店への取材も多数。ライフワークはアート鑑賞、飲み歩き、大相撲、猫。

※特に記載のない場合、料金は税金・サービス料を含みます。
※各施設、営業時間に変更のある場合がございます。

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