ART

「中之島線」駅前はグッド・デザインがいっぱい。

※当記事は冊子『The ROYAL』2008年11・12月号でご紹介した内容です。商品やサービスの内容・料金は変更になっている場合があります。

リーガロイヤルホテル(大阪)も駅から直結。 名建築、意匠・・・目に楽しい中之島線をゆく。

 2008年10月19日、京阪電車「中之島線」が開業したことはもうご存じでしょうか。地下鉄谷町線ともリンクする「京阪天満橋駅」を東の始点に、「なにわ橋駅」「大江橋駅」「渡辺橋駅」。そしてリーガロイヤルホテル(大阪)と直結して登場した「中之島駅」が西の始点となります。

 地下路線である「中之島線」は、どの駅を利用しても、地上に出るとクラシカルな近代建築が目に飛び込みます。大阪市中央公会堂、府立中之島図書館をはじめ明治~昭和初期に贅をこらして建てられた名建築。そして、それぞれの駅のたもとに架かる橋はどれもクラシカルで秀逸なデザイン。

 その名の通り中之島を縦断するこの新線は、「大大阪だいおおさか」を象徴するいわば近代建築線でもあり、「水の都」大阪ならではのリバーサイド線なのです。水辺にそびえる1965(昭和40)年に現在地に開業したリーガロイヤルホテル(大阪)も、そんな贅沢な風景になじむクラシカルな佇まいです。

 そんな中之島線の駅前で、まずは中之島駅から最も近いカフェラウンジの、こんなグッド・デザインはいかがですか?

01. 伝統美

●中之島駅(大阪国際会議場)
リーガロイヤルホテル(大阪) メインラウンジ

紫雲しうんのシャンデリア

ラウンジの頭上、仰ぎ見るとまるで空にたなびく雲のように優美なシャンデリアは、造形作家・多田美波ただみなみ氏によるデザイン。長さ10cmの小さな棒状クリスタルガラスを45,000本の鉄線に約25万個吊して電球を覆い、21の紫雲を形作っています。2階宴会ラウンジの回廊からは、また違った表情で幻想的な光景。

金蒔絵きんまきえの柱

高くそびえ立つ豪華な柱は、吉田五十八よしだいそや氏のデザインによるたなびく金色の雲形を、縣治朗あがたじろう氏が精魂込めて制作したもの。長さ8.2mの一枚ものの銅板ラッカー塗りの上に、金箔、金砂子を一片一片丁寧に張り、蒔絵をほどこし、さらに透明ラッカーで10回ほど研ぎ出しながら仕上げ。光の具合でまたニュアンスが変化。

源氏物語絵巻

コーヒーカップからふと顔を上げ、壁を見やると目に入る絵巻。これは土佐派の画家によって1750年頃、江戸中期に制作されたもので、源氏物語五十四帖のうち十二帖を描いた金地極彩色の華麗な作品です。右上から順に桐壺きりつぼ胡蝶こちょう賢木さかき宿木やどりぎ若紫わかむらさきあおい初音はつね空蝉うつせみ花散里はなちるさと紅葉賀もみじのが澪標みおつくし絵合えあわせの構成となっています。

水の回廊

「小川が流れている喫茶空間」と呼ばれることが多いのは、この「水の回廊」のせい。「曲水の宴」を模し、優美な曲線を描く水の流れは、ゆったりと屋外の日本庭園の滝壺へと注いでいます。吉田五十八氏が奈良の中宮寺に次いで水を建築に取り入れた作品。まるでラウンジで過ごす時間を止めてしまうかのようです。

滝と日本庭園

メインラウンジの正面に眺めることのできる日本庭園は、かやの木を主にした林を右端に、竹藪を左端に。奥深い深山を思わせるそんな「静」の空間とは対照的に、二段構えの高さ10mの滝が水しぶきをあげる「動」の空間。そんな自然のコントラストに、ここが中之島のど真ん中であることを忘れてしまいそうです。

日本建築の大家吉田五十八氏が「光と水と緑」をテーマに設計。新メニューはレクラとバリスタがコラボレーションした「ショコラ*ショコラチーノ」。カプチーノに雲形を模した薄く繊細なビターショコラが少しずつ溶ける新鮮な味。
メインラウンジ限定のショコラ2種と季節のボンボンのセットで。¥1,964
TEL 06-6441-0956

「大大阪」の贅を尽くした名建築が駅前にありました。

 堂島川と土佐堀川に挟まれた中州・中之島は、江戸時代には「天下の台所」と呼ばれた大阪を支える海運の街でもありました 。

 諸藩の蔵屋敷が姿を消した明治以降になると、パリのシテ島に倣い、官庁や文化施設が順に建設されました 。

 1903(明治36)年には日本銀行大阪支店、翌1904(明治37)年には府立中之島図書館。それに続くように1918(大正7)年に中央公会堂、そして1921(大正10)年には大阪市役所(現在は1982(昭和57)年第1期、1985(昭和60)年第2期竣工の新庁舎)などの公共施設が登場。そして、1925(大正14)年には、当時の最先端の建築技術を駆使したダイビルも竣工し、そうしたオフィスビルが次々と中之島の川縁を埋めてゆきます。それは当時の大阪で、「動く街」として、一大ムーブメントを巻き起こしたことでしょう。

 そして、1935(昭和10)年にはリーガロイヤルホテルの前身でもある新大阪ホテルも竣工を迎えたのでした 。

 京阪「中之島線」の駅前には、そんな「大大阪」時代から残る近代建築がそびえています。中でも、府立中之島図書館や、ダイビルやリーガロイヤルホテル(大阪)のように、誰でもその建築を間近に見られる建物があります。重厚な表の顔に負けない豪奢な内部建築や、何気ない駅前のグッド・デザインを探しに訪れてみませんか 。

02. 玄関ホール

●渡辺橋駅
ダイビル

渡辺橋駅のすぐ斜め前にそびえるレンガ造りの8階建て。1925(大正14年)竣工、 渡辺 節わたなべ せつによるオフィスビルのはしり。正面玄関を入ると、エレベーターが並ぶロマネスク様式の吹き抜け空間があり、圧巻。蕎麦屋、薬局、喫茶、テーラーなどが軒を連ねるビル内商店街も楽しい。

03. 中央ホール

●なにわ橋駅
府立中之島図書館

1904(明治37)年、住友家の寄付により建設。住友家の建築技師であった野口孫市のぐちまごいち日高 胖ひだか ゆたかによる設計の、ネオバロック様式。階段のあるドーム状の中央ホールは、教会を思わせる造りとなっている。ステンドグラスの天井から射し込む光が、天候や時間により表情を変える。大阪の貴重な歴史文献も豊富。
大阪市北区中之島1-2-10 9:00~20:00(土曜日~17:00)
日・祝日&第2木曜休(祝日の場合はその前日も休み)
TEL 06-6203-0474(代表)

04. エレベーター

●中之島駅(大阪国際会議場)
リーガロイヤルホテル(大阪) 現ウエストウイング

前身である大阪ロイヤルホテルは1965(昭和40)年竣工、吉田五十八氏が当時の最先端技術を活かし設計。「大阪の迎賓館」とも称されます。1973(昭和48)年に新館開業。以降、階数表示に見られる金の数字パネルのように、創業時のモダンなテイストを残しつつ新しいスタイルを融合。それが独特のレトロモダンなスタイルを生んでいます。

05. 2つの“みおつくし”

澪標みおつくし」は古来より水路を示す標識。1894(明治27)年には、それを摸した大阪市章が生まれました。水都大阪らしいこの「澪標」は、この街ならではのグッド・デザイン。

 どこかで見た覚えはありませんか? 近代建築の橋のこんなところにも、そういえばホテル内の割烹でも 。

●なにわ橋駅
難波橋のペディメント

1915(大正4)年完成、宮内庁や海軍などでも建築を手掛けた宗 兵蔵そうひょうぞうがデザイン。橋は全長187.15m、鎮座する4体のライオン像から「ライオン橋」の愛称も。欄干の中央、ペディメントに組み込まれた「みおつくし」ロゴ。水都の繁栄への願いも、モダンにデザインされています。
「なにわ橋駅」の駅前となった難波橋のライオン像。

●中之島駅

リーガロイヤルホテル(大阪)地下2階
カウンター割烹 みおつくし
「中之島駅」からもっとも近い割烹でもある「みおつくし」。(右)
旬の厳選素材をシンプルに。きんきの一夜干し¥4,043(左)

いかにも大阪らしい店名をかかげ、くじらや浪花野菜など、ならではの素材を大阪の味に昇華。気軽な一品から揃う多彩なメニューは定番だけでも70~80種。板前の「身を尽くし」はつまり「心づくし」でもあります。そんな板前を目の前にさっと一杯ならカウンター席、接待には個室と、使い勝手の良さも喜ばれています。日本酒、焼酎も豊富に揃えております。
TEL 06-6441-0978

06. 銀河のカウンター

●中之島駅(大阪国際会議場)

リーガロイヤルホテル(大阪)30階
日本料理&バー 星宙ほしぞら
季節の前菜盛り合わせ¥2,888。料理長自ら焼いた器も彩りと華やかさを添えます。

ここ数年、中之島界隈では夜景が魅カの高層建築ラッシュ。「中之島駅」前のリーガロイヤルホテル(大阪)30階には、まるで夜空に吸い込まれたような空間の日本料理&バーがあります。日本料理総料理長・平野規元ひらののりもとによる華麗な皿も、目にも美味しいグッド・テザイン。正統派日本料理をベースにした華やかな料理は、大阪をぐるりと見渡す夜景とともに気分が浮き立つと評判を呼んでいます。

TEL 06-6441-0952

07. ホテル奥の森

●中之島駅(大阪国際会議場)

リーガロイヤルホテル(大阪)1階 
ダイニング&カフェ ナチュラルガーデン
滋味のある「サラダ仕立ての多彩な野菜と魚介のオンパレード」¥4,389

写真は切り株をイメージした円形カフェ空間。360度ガラス張りの窓の向こうには庭園や池が広がり、まるで森に紛れ込んだかのような爽やかさ。隣接するシックモダンなダイニング空間では、シェフ豊田が厳選した旬の野菜の一品を。ソースと野菜でみずみずしく描かれた皿、緑溢れる空間とナチュラルなグッド・デザインがそこかしこに。コースでゆっくり“自然”と共にご賞味ください。

08. 名匠のバー

●中之島駅(大阪国際会議場)

リーガロイヤルホテル(大阪)1階 
リーチバー

英国の陶芸家バーナード・リーチ氏の着想を吉田五十八氏が具現。棟方志功むなかたしこう、河井寛次郎、濱田庄司、芹沢銈介せりざわけいすけという日本民芸の最高の作家によるコラボレーション空間は、どこにもない英国カッテージ風バーとして創業当時より多くの方々に愛されています。

TEL 06-6441-0983

アンティーク
時折、ジリリリと鳴る電話音をご存じでしょうか。入口近くにあるこのアンティークの電話は内線電話として使用され、時折懐かしい音を心地よく響かせます。創業当時、空間に合わせて作られたウィンザー風椅子や磨き上げられたカウンター。お客さまと時の流れに作り上げられた、渋い光沢が放たれています。
銅板メニュー
開業当時に使われていた銅板メニュー。細部までオリジナルにこだわり制作されました。価格の変動のため現在は使用されていませんが、豊富なウイスキーはじめ、バーテンダーによるカクテルなど、当時より変わらずご好評をいただいています。クロックムッシュなどの多彩なサイドメニューも人気。ノーチャージ。
手焼きの灰皿
グリーンのガラス部分は、タンカレーのボトルを砕いて焼き込んだもの。いかにもバー空間にふさわしい手焼きの灰皿は、一見同じに見えて実は表情が異なります。色やふちの幅、内側のへこみの角度など。何度も作り足されたオリジナル灰皿からも、リーチバーの長い時間が感じられます。写真手前が唯一残る初代作品。
表情を変える壁
写真に見えるカウンターと奥の壁面は、古い煉瓦。バーの入口付近からカウンター正面は、籐蓆とうむしろを斜めに組んだ壁。そして木の床にはペルシャ絨毯を敷いて、独特の贅沢な民芸の空間を生み出しています。壁には、棟方志功の板画や、バーナード・リーチの陶板などがさらに表情を与えています。
※特に記載のない場合、料金は税金・サービス料を含みます。
※当記事は冊子『The ROYAL』2008年11・12月号でご紹介した内容です。商品やサービスの内容・料金は変更になっている場合があります。
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