麻布台ヒルズ
進化を続ける東京都港区。2023年10月には「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」、11月には「麻布台ヒルズ」が開業し、新たなランドマークとして注目を集めています。 今回は、ライターの宇都宮 薫さんが、都会に憧れる二人の娘さんを連れて、昨年開業したばかりの2つのヒルズをめぐります。 最先端の街並みは、子どもたちの目にどのように映るのでしょうか?
2人の娘を連れて訪れたのは、昨年11月24日に開業した大型複合施設「麻布台ヒルズ」だ。約6万4000平方メートルの広大な敷地に、3棟の超高層タワーと低層の商業施設が立ち並ぶ。高級ブランド店や大人向けのショップが多いスポットで、果たして小中学生が楽しめるのか……という懸念は、流線を描く不思議な形の建物を目にした子どもたちの弾むような声によって吹き飛んだ。「わぁーすごい! お山の公園みたいで楽しそう!」 最新のビルを見学すると聞いて、ビジネスパーソンが忙せわせわしなく駆け回る無機質な建物をイメージしていた子どもたちは、公園のような親しみやすさとスタイリッシュさを併せ持つランドスケープを前にして、少し緊張がほぐれたようだ。
「麻布台ヒルズ アリーナ」の頭上には、へザウィック・スタジオがデザインした大屋根「The Cloud」が架かる。屋根の下のオープンスペースでは様々なイベントが催され、街の賑わいを生み出している。
中央広場の傍には段々畑のような果樹園が。建物の傾斜を利用した斜面に温州ミカンやブルーベリー、レモン、スモモなど様々な果樹が植えられている。
そんな子ども目線の率直な感想は、低層部のデザインを手掛けたトーマス・ヘザウィック氏の狙いそのものなのではないだろうか。高低差のある地形を生かしたユニークな建物には、迷路のように曲がりくねった散策路が敷かれ、訪れた者の探索心をくすぐる。低層部の屋上は緑の植栽で覆われていて、320種もの木々が季節ごとに表情を変える。中央広場にはおいしそうな実をつけた果樹園が広がり、まさに子どもが自分たちの遊び場と見間違うような「ヴァーティカル・ガーデン・シティ(立体緑園都市)」となっているのだ。
奈良美智《東京の森の子》2023 年ブロンズ、ウレタン塗料 762×243×234cm 撮影:新津保建秀人々の目を楽しませてくれるパブリックアートが点在する中央広場の芝生エリア。奈良美智(ならよしとも)氏による野外彫刻《東京の森の子》(2023)は、麻布台ヒルズのシンボル的存在。
麻布台ヒルズ キオスク中央広場にはユニークなデザインの3つのキオスクがあり、クレープやドリンクを販売。クレープは、ローストピーカンナッツとピスタチオを混ぜ合わせた風味豊かな米粉の生地が特徴的。4種のチーズがたっぷり入ったクアトロフォルマッジ(¥980)、ほうれん草と生ハムを包んだポパイ(¥980)。
まずは中央広場を目指して、ガーデンプラザをぶらぶら歩く。多彩なショップが並んでいて、親子で会話をしながら散策するのにちょうどいい道のりだ。中央広場に到着すると、かわいらしいフォルムのキオスクから甘い匂いがふんわりと漂ってくる。ここでクレープを購入し、芝生の上でゆっくり味わうことにする。ビルの間から心地よい風が吹き抜けて、都心部にいながら野原にピクニックに来たような、爽やかなひとときを過ごした。
デジタルアートミュージアム:チームラボボーダレスチームラボ《Light Vortex》©チームラボ
チームラボ「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス」 2018-2022 東京 お台場 ©チームラボ「ボーダレス」という名のとおり、境界のないアート群に身体ごと没入していく。部屋から部屋へと彷徨うように渡り歩き、多くの発見が得られるアート体験は五感を大いに刺激する。
中央広場でくつろいだ後は、「デジタルアートミュージアム:チームラボボーダレス」へ。森JPタワーの地下に広がる約1万平方メートルの巨大な空間に、50以上のインスタレーション作品が展示されている。部屋から部屋へと歩きまわるうちに方向感覚を失い、まるで自分も作品の一部になって迷宮を漂っているような気分に。子どもたちも迷うことそのものを楽しんでいるようだ。アートの世界に体ごと入り込んだ子どもたちの目は、作品が放つ光に負けず劣らずキラキラと輝いていた。
複数の建物で構成される麻布台ヒルズの中核を担う超高層ビル。大阪の「あべのハルカス」を超え、日本一の高さ(325m)となった。地上64階、地下5階で、オフィスや商業施設、インターナショナルスクールなどが入っている。東京都港区麻布台1丁目3-1TEL03-6433-8100営業時間は施設により異なる 年中無休
東京都港区麻布台1丁目3-1TEL050-1731-1700 11:00〜19:00※天候やイベントの開催状況により変動年末年始休
アート集団チームラボが手がける地図のないミュージアム。お台場から麻布台ヒルズに移転し2024年2月9日にオープンした。新たな作品や日本未発表作品も多数加わる。東京都港区麻布台 1-2-4 麻布台ヒルズ ガーデンプラザ B B1TEL03-6230-966610:00〜21:00 ※最終入館は閉館の1時間前第1・第3火曜休大人¥3,800〜/中高生¥2,800/子ども¥1,500/3歳以下無料
虎ノ門ヒルズ
虎ノ門ヒルズの中心に位置するオーバル広場の芝生エリアには、スペインを代表する世界的アーティスト、ジャウメ・プレンサの大型彫刻《ルーツ》が展示されている。
N・S・ハルシャ|N.S. Harsha《マター》2014年ステーションタワーにもたくさんのパブリックアートがあるので、子どもと一緒にアートを探し歩くのも楽しい。
麻布台ヒルズを出て桜田通りを10分ほど歩き、次の目的地「虎ノ門ヒルズ」へ。2014年に「森タワー」が誕生したのを起点に、2020年には「ビジネスタワー」、2022年には「レジデンシャルタワー」が次々と竣工。そして昨年10月に虎ノ門ヒルズ駅直結の「ステーションタワー」が登場したことにより、4つのゾーンをデッキで自由に行き来できるひとつの街が完成した。
©藤子プロ ©森ビル22世紀のトーキョーからやってきたネコ型ビジネスロボット、虎ノ門ヒルズの公式キャラクター「トラのもん」。ステーションタワー2階のワゴンショップではオリジナルグッズの販売も。とことこくらぶ トラのもん(¥2,420)(写真中)、トラのもん ロルバーン ポケット付メモ(¥990)(写真右)。
敷地内のあちこちにあるパブリックアートを探しながら歩いていると、ビジネスタワーのエントランスに虎ノ門ヒルズの公式キャラクター「トラのもん」を発見。これには娘たちも大喜び。子どもと一緒に訪れたなら、ぜひ立ち寄りたいフォトスポットだ。
飲食や物販など個性的な27店舗が連なる「T- MARKET」。
ハンバーガーショップ「Builders」。厚みのあるパティはまるでステーキを食べているよう。写真右はクラシックダブルチーズバーガー(フレンチフライ付)¥2,268。
そろそろランチタイムということで、「T -MARKET」内のお店でハンバーガーをテイクアウトし、タクシーで芝公園へ。隣接する東京タワーに上ってみると、この日歩いた麻布台ヒルズと虎ノ門ヒルズの位置関係がよくわかる。
芝公園 ©(公財)東京都公園協会芝公園まで足を延ばしてお花見を楽しむのもおすすめ。弁天池や芝丸山古墳の付近を中心に約 140 本の桜が植えられていて、満開の桜越しに東京タワーが見えるのは芝公園ならでは。最後に東京タワーの展望台からこの日のルートをなぞって見るのも面白い。
帰り道、2つの巨大なヒルズをめぐったことで街づくりに興味を持った娘たちは、自分ならどんなビルを建てたいか、どんな空間を作りたいか、楽しそうに議論していた。新しい街を気ままに散策することで、子どもなりにたくさんの発見とアイデアを得たようだ。
2023年10月に開業した「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」は、地上49階建て、高さ約266mの超高層タワー。東京メトロ日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅に直結しており、オフィスやホテル、飲食店などが入っている。東京都港区虎ノ門2丁目6-1TEL03-6406-6192 ※営業時間は施設により異なる年中無休
虎ノ門ヒルズ ステーションタワー地下 2 階TEL03-6206-7601火〜土曜 11:00~23:00(L.O.22:00)/日・祝 11:00~22:00(L.O.21:00)月曜休
東京都港区芝公園 1・2・3・4 丁目TEL03-3431-4359常時開園 入場無料 年中無休
―旅する人―
宇都宮 薫さん
出版社勤務を経て、現在はフリーランスの編集者・ライターとして活動。雑誌・ウェブメディア等での執筆のほか、書籍の編集・構成を手掛ける。近年では親子旅をテーマに執筆することも多く、街歩きした後にイラストマップを手描きするのが趣味。