
東京・三鷹~神奈川・川崎 世界に誇るアニメを探訪
※当記事は『The ROYAL』2022年春号でご紹介した内容です。商品やサービスの内容・料金は変更になっている場合があります。
リーガロイヤルホテル東京からはじまる旅

緑が生い茂る屋上に佇むロボット兵。迫力ある立ち姿で、三鷹の森ジブリ美術館の守り神とされている。
日本のアニメーションやマンガは、世界に誇れる文化の一つです。その世界観を堪能できる“聖地”を、東京在住の編集者兼ライターの小林 渡さんと訪ねてみましょう。
文・写真/小林 渡(生田緑地は提供)
膨大な作業と創造力の結晶、それがアニメーション。


いとこの亮くんは、スタジオジブリ制作の映画『風の谷のナウシカ』のセリフを最初から最後まで完璧に覚えていた。わが家は子どもを映画に連れて行ったり、ビデオを見せたりする文化がなかったから、後にテレビで『風の谷のナウシカ』が放送された時、いとこの語るセリフのままで心底びっくりした。これが私とジブリの出会いである。
子どもの頃は、よく絵を描いていた。だから「アニメは1秒間に24枚の絵が必要」と聞いて、1枚描くのも大変なのに……と、気が遠くなったことをよく覚えている。


©Museo d’Arte Ghibli
今回の旅は、日本のアニメ界を牽引する「三鷹の森ジブリ美術館」から始まる。常設展示室「映画の生まれる場所」は、その恐ろしく膨大な作業が、スタジオジブリの世界観をまとって展示されている。子どもは子どもなりに、大人は大人なりに、イラストやアニメの好きな人はさらに深掘りできるよう工夫されていて、つい見入ってしまった。それにしても名誉館主、宮崎駿氏の頭の中はどうなっているのだろうか……。宮崎氏の映画は、監督がほぼ全てのシーンのカット、秒数、セリフなどを決め、コンテを描く。そのコンテをもとにアニメーターが絵を描くから、実写映画のような偶然に撮れたシーンはあり得ない。つまり、監督の頭の中では、制作前から物語のほとんど全てが完成しているのだ。一体全体、どうしたらそんな創造性が宿るのか、クリエイティブの末席にいる者として軽くめまいを覚えつつ、人類の無限の可能性に一縷の望みを託して次へと向かう。

日本の天文学研究を推進するとともに開かれた研究施設として、キャンパスの公開や定例イベントなども行っている。
三鷹市星と森と絵本の家
国立天文台の敷地内にある絵本の展示施設。国立天文台の協力のもと三鷹市が設置・運営している。大正時代から利用されていた高等官用の旧1号官舎を移設、建設当時の姿に復元して2009(平成21)年に開館。絵本との出合いや、広い敷地を利用したさまざまな体験を通じ、子どもたちの知的好奇心を育む場となっている。

国立天文台の敷地内にある絵本の展示施設。国立天文台の協力のもと三鷹市が設置・運営している。大正時代から利用されていた高等官用の旧1号官舎を移設、建設当時の姿に復元して2009(平成21)年に開館。絵本との出合いや、広い敷地を利用したさまざまな体験を通じ、子どもたちの知的好奇心を育む場となっている。
武蔵野の森にある「国立天文台」の重厚な門構えにたじろぎつつ、敷地に入っていくと「三鷹市星と森と絵本の家」が見えてきた。天文台の1号官舎として使われていた木造平屋を移設した館内は、広々とした和室に、たくさんの絵本や子どもたちの喜びそうな仕掛けのおもちゃなどが。庭には手堀りの井戸もあって、親子連れが思い思いの時を過ごしている。ちなみに天文台の敷地内を見学したい場合は、守衛室で受付が必要だ。およそ100年前につくられた第1赤道儀室のほか、全部で3つの観測ドームがあり、宇宙への興味が広がりそうだ。

1974(昭和49)年より吉祥寺で営業を続ける精肉店「吉祥寺さとう」の看板商品は、すべて国産の食材を使用した、肉たっぷりの「元祖丸メンチカツ」1個¥250。昔は小判形だったが、忙しさから丸いまま揚げたのが今の形のルーツだそう。休日はもちろん、平日も行列ができる吉祥寺の銘品の一つ。
バスで吉祥寺まで出て、駅前の商店街を散策。ひときわ長い行列ができていたのは「吉祥寺さとう」だ。私も列に並び、一番人気の「元祖丸メンチカツ」を頬張って一息つく。うん、おいしい!充実の1日である。
【DATA】
三鷹の森ジブリ美術館
東京都三鷹市下連雀1丁目1-83
TEL 0570-055-777 10:00~18:00
日時指定の完全予約制
火曜、年末年始休(他、長期休館日あり)
大人・大学生¥1,000、高校・中学生¥700、小学生¥400、幼児¥100(4歳未満は無料)
三鷹市星と森と絵本の家
東京都三鷹市大沢2-21-3 国立天文台内
TEL 0422-39-3401
10:00〜17:00 ※3月現在12:00~14:00は入館不可
火曜、年末年始休(他にメンテナンス休館あり)
入館無料
吉祥寺さとう
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-1-8
TEL 0422-22-3130
10:00~19:00(メンチカツの販売は10:30~) 年始のみ休
生田で暮らしていたドラえもんの創造主。

藤子・F・不二雄が遺した『ドラえもん』をはじめとする約5万点のマンガの原画を収蔵する美術館。藤子・F・不二雄先生愛用の仕事机を展示(写真左)。また、門外不出の原画や貴重な資料なども見ることができる(写真右)。
藤子・F・不二雄こと、藤本弘氏は1961(昭和36)年より、川崎市生田で暮らしていた。新宿にあるスタジオまで、毎日電車で通っており、その縁からこの地に「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」が設立されたそうだ。
館内を歩いているうちに、藤子・F・不二雄ファンにはたまらない“仕掛け”がこっそり仕込んであることに気が付いた。壁のあしらいや注意書き、Fシアターの映像作品まで。詳細は書かないので、ぜひ直接その目で見てほしい。


ⒸFujiko-Pro
屋上に出ると、緑あふれる景色にどこでもドア。この自然は隣接する「生田緑地」の一角なのだ。歩いて生田緑地東口ビジターセンターへと向かう。

1941(昭和16)年に都市計画が決定された川崎市内最大の都市公園。多摩丘陵の自然や、7世紀の生田長者穴横
穴墓群のほか、鎌倉時代に源頼朝の侍大将だった稲毛三郎重成が築いたとされる城跡などがある。

ちょっとした山道を10分ほど登ると枡形山 の満開の桜が迎えてくれた。実は二十数年前、私はこの裏にある大学に通っていて、サークルの花見といえば生田緑地だった。当時を思い出し、久しぶりに大学の最寄り駅だった向ヶ丘遊園駅へ。

今年で創業51年を数える、向ヶ丘遊園の老舗の和菓子店。創業者が新潟出身であり、新潟県産のもち米を使った和菓子は全て無添加。あんこも甘すぎず上質な味わい。朝6時半から営業しており、地元の人たちに愛されている銘店である。写真右は生田緑地内にある「岡本太郎美術館」開館を記念し、和菓子店が共同で創作した「TAROの夢」。岡本太郎の名言“芸術は爆発だ”をイメージして、もなかの皮に唐辛子を使い、辛さと甘さのバランスが絶妙。1個¥170(小倉あん・ごまあん)。
駅前の様子は大きく変わったが、和菓子の「三吉野」は当時とほとんど変わっていなかった。二代目のご主人は、私が卒業した後の街の変遷を教えてくれた。懐かしい記憶がよみがえる。ついたくさん買いすぎてしまった和菓子は、甘く、ちょっぴりほろ苦い思い出の味がした。
【DATA】
川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム
神奈川県川崎市多摩区長尾2-8-1
TEL 0570-055-245(電話受付9:30~16:00)
開館時間10:00~18:00 日時指定の完全予約制
火曜、年末年始休(他の休館日あり)
大人・大学生¥1,000、高校・中学生¥700、子ども(4歳以上)¥500
生田緑地
生田緑地東口ビジターセンター
神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-4
TEL 044-933-2300
8:30~17:00
入場無料 年末年始休
三吉野
神奈川県川崎市多摩区登戸2701-1
TEL 044-922-5274
6:30~19:00 木曜、年末年始休
