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広島市~三次み よ し市 広島から平和を願う

※当記事は『The ROYAL』2022 年夏号でご紹介した内容です。商品やサービスの内容・料金は変更になっている場合があります。

リーガロイヤルホテル広島からはじまる旅

広島市環境局中工場
ごみ処理場のイメージを覆す 2 階の通路「エコリアム」は見学自由。通路の先は海側のデッキにつながっている。

 第94回アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した、日本映画『ドライブ・マイ・カー』が撮影された広島。今回は、新聞記者の矢追健介さんと『ドライブ・マイ・カー』のロケ地や平和記念公園や原爆ドームを 巡りながら、ウクライナなどで平和が脅かされている不透明な世界情勢の今だからこそ、広島が私たちに伝えている“平和”とは何か、そのメッセージを感じる旅です。

文・写真/矢追健介(写真撮影は中工場、ジミー・カーターシビックセンター、三良坂平和美術館)

広島という街の存在それこそが平和の象徴。

広島市環境局中工場
数々の美術館を手がける、世界的な建築家の谷口吉生さんが設計したごみ処理施設。単色の大きな箱といった外観は、まるで美術館のよう。建物外観や2階のガラス通路「エコリアム」などは自由に見学できる。

 今年の春から10年ぶりに広島市に住むことになった。2007年に新聞記者として初めて赴任した土地だ。上司から再赴任を打診され、内心浮かれたままの3月末、新居となる家の鍵を受け取って不動産屋の外へ出ると、もうお昼を過ぎていた。
 お好み焼きソースの匂いが街角に漂う。ああ、これが広島だ――。
 広島市はとても住みやすい。山や瀬戸内海がほど近い市内中心部を6本の川が南北に流れ、自然のもたらす緑がコンパクトな生活圏に安らぎを与える。今年の米アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)はこの素敵な街がロケ地となった。

「エコリアム」の通路では両側に稼働中のごみ焼却装置が並ぶのがガラス越しに見える。

 劇中、専属ドライバーのみさきが、妻を亡くした主人公・ふくをお気に入りの場所に案内する印象的な場面は「広島市環境局中工場」で撮られた。建築家の谷口たにぐち吉生よ し おさんの設計で、2階の「エコリアム」と呼ばれる空間には、建物を貫通する特徴的なガラス張りの自由通路がある。両側に銀色の焼却炉がそびえ立つ様子は、さながらアート作品のようだ。

『ドライブ・マイ・カー』のロケ誘致に携わった広島フィルム・コミッションの西崎智子さん。「広島で撮っていただいた作品は、すべて広島にとって宝物です」と笑顔を見せる

 2020年9月、広島フィルム・コミッションの西崎智子さんは濱口監督を中工場に案内し、広島の“平和の軸線”を説いた。建築家の丹下健三さんが平和記念公園を設計する際に描いた、当時撤去論もあった原爆ドームを起点に、原爆死没者慰霊碑、広島平和記念資料館を南北に結ぶ直線のことだ。丹下さんに師事した谷口さんは軸線の延長上に中工場のガラス通路を置いた。平和の希求が途切れず続くことを願うかのように。「濱口監督は『ごみ処理施設にも平和の理念がある』と感動されたようでした」と西崎さん。

平和記念公園
原爆ドーム
写真提供:広島県
広島市の中心部にある広大な公園で、世界の恒久平和を願って爆心地に近い場所に建設された。園内には、1996年に世界遺産に登録された原爆ドームや広島平和記念資料館、原爆死没者慰霊碑など多くの施設やモニュメントが集まっている。建築家の丹下健三氏の構想により、資料館、広場、慰霊碑、原爆ドームが“平和の軸線”と呼ばれる、1本の軸線で結ばれた配置となっている。

 中工場から北上し、ロケ地となった平和記念公園を訪れたら、広島平和記念資料館を見学しよう。そして「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と書かれた慰霊碑に手を合わせたい。今も原爆症に苦しむ人がいる核兵器の非人道性を前に、未来のために何ができるかを考 えさせられる。

おりづるタワー
原爆ドームの東隣にあり、屋上の展望台からは瀬戸内の風を感じながら広島の景色を一望できる。
2022年4月からウォールアートプロジェクトとして、9層のらせん状のスロープに、広島と戦争を描いた漫画『この世界の片隅に』の作者、こうの史代さんをはじめとする広島出身の9人のアーティストの作品が展示されている。写真はこうの史代さんのウォールアート。1層ごとに見ごたえのある作品が展示されている。

 広島は緑豊かな街へと復興を遂げた。原爆ドーム東側の複合商業施設「おりづるタワー」に上ると、その景色を一望できる。すると資料館で見た、焼け野原となったかつての悲惨な光景が頭をよぎった。あれから 77年。この美しい街並みこそが「平和の尊さ」で、広島のメッセージなんだろう。
 ロケ地巡りには、つばめ交通によるリーガロイヤルホテル広島の送迎付きツアーが便利だ。

【DATA】

広島市環境局中工場

広島市中区南吉島1丁目5-1
TEL 082-249-8517
9:00~16:30 年末年始休
工場内見学(無料):月〜金曜(祝日、年末年始、8/6を除く)と偶数月の第3日曜。見学希望日の前月20日までに要電話申し込み。

広島平和記念資料館

広島市中区中島町1-2
TEL 082-241-4004
8:30~18:00(季節によって閉館時間は変更)12/30、31休館
大学生以上 ¥200、高校生 ¥100、中学生以下無料

おりづるタワー

広島市中区大手町1-2-1
TEL 082-569-6803
展望台は10:00~19:00(展望台への入場は~18:00)
大人¥2,200、中高生¥1,400、小学生¥900、幼児(4歳以上)¥600
おりづる投入料金¥100
※詳細はホームページまで

梵鐘がつないだ、元米大統領とのきずな。

ジミー・カーターシビックセンター

 ノーベル平和賞受賞者としても知られるジミー・カーター元米大統領。実は広島県北東部にある山あいの街、三次み よ し市に2度も来たことがある。 縁をつないだのは地元・正願寺の梵 鐘ぼんしょうだ。戦時中、軍へ供出したが使われず、英国を経由して米国へ。1985年、米ジョージア州アトランタ市で元大統領の平和活動の拠点施設が造られた時に、在留邦人が平和のシンボルとして寄贈し、展示されている。

カーター元米大統領との縁がきっかけで名付けられた生涯学習施設。元大統領のことを知ることができるコーナーのほか、多目的ホールや図書室、プラネタリウムも備えられている。すぐ裏のキャンプ場はコロナ禍の今も大盛況という。

 この縁から、1990年にカーター元大統領が来訪。1994年には生涯学習や平和学習の拠点として造られた「ジミー・カーターシビックセンター」の落成行事参列のためにご夫妻で再訪してくれた。

カーター元大統領来訪に伴い、通りの名前はカーター通りに(左)。かつてピーナッツ農家だったカーター元大統領から贈られたピーナッツは、今では地元のお土産品になっている(右)。

 施設では、ピーナッツ農家出身で人種差別や教育問題への疑問から政治家を志したというカーター元大統領の軌跡を知ることができる。日本でも唯一の場所だろう。

三良坂平和美術館
1986年に行われた三良坂町の非核平和自治体宣言の記念に、1991年に開館。地元画家、柿手春三さんの作品を常設展示。夏には原爆をテーマにした作品の企画展もある。

 また、三次市にある「三良坂み ら さ か平和美術館」では、地元出身のシュルレアリスム画家、柿手春三かきてしゅんぞうさんの作品を常設展示している。海の埋め立て反対運動に立ち上がるなど社会活動にも精力的だった画家らしく、柔らかな色使いの風景画にも自然への思いが感じられる。のどかな地方都市だが、確かに根付いた文化の息づかいが、この街にはある。

【近隣の立ち寄りどころ】

平田観光農園

三次市を訪れた際には、年間を通して果物狩りが楽しめる平田観光農園に立ち寄ってほしい。約15haの広大な農場で約14樹種約150品目もの果物を栽培。夏季には名物「ちょうど狩り」(8/7~11月初旬)を開催(左)。広大な畑を巡って桃やぶどう、梨やりんごなど、色々な種類の果物を収穫するのでハイキング気分で楽しめる。(チケット制/¥1,430~)。

広島県三次市上田町1740-3
TEL 0824-69-2346
10:00~17:00(12月~2月は~15:00)
無休(12月~2月は木・金曜休/祝日を除く)

【DATA】

ジミー・カーターシビックセンター

広島県三次市甲奴町本郷940
TEL 0847-67-3535
9:00~18:00
入場無料
月曜、年末年始休

三良坂平和美術館

広島県三次市三良坂町三良坂2825-1
TEL 0824-44-3214
9:00~17:00(入館は~16:30)
一般¥150、高校生以下と65歳以上は無料(企画展は別料金)
月曜、年末年始

※特に記載のない場合、料金は税金・サービス料を含みます。
※各施設、営業時間に変更のある場合がございます。ご利用の際はご確認ください。
※当記事は『The ROYAL』2022年夏号でご紹介した内容です。商品やサービスの内容・料金は変更になっている場合があります。
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