岸和田市で生まれ育ち、東京の文化服装学院に入学。その後は東京を本拠として国内のみならず、世界を舞台に駆け巡ってきコシノジュンコさん。「大阪・関西万博2025」の仕事を機に、大阪に滞在する頻度が多くなり、リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェットコレクションを定宿にして、多忙な仕事の合間に大阪の街を満喫しているという。仕事、大阪、万博など、縦横にパワフルに活動するコシノさんの近況を伺ってみた。
「リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェットコレクションに宿泊する時、部屋に入って街の景色を見ると、すぐそばを川が流れていてその向こうにビル街が見えて、ああ、また大好きなこの街にやってきたなあと嬉しくなるんです」と話す。
十代の終わりに岸和田市から東京へ。そのままずっと東京住まいだったので、実は大阪にはあまり縁がなかった、と話すコシノさん。1970年の日本万国博覧会(以下、大阪万博)の時は何度か来阪したそうだが、今回、2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)のシニアアドバイザーに就任したことで、プロジェクトがスタートした2019年の6年前から大阪に頻繁に来るようになった。
さらに、母校の岸和田高校やリーガロイヤルホテル大阪、南海電鉄などのユニフォームデザインを手がけることになり、一気に大阪が身近な存在となったそうだ。
「もう、大阪の方からいきなりドーンと近づいてきてくれた感じで(笑)、グッと距離が縮まって、すっかり大阪ファンになりました。食べ物も美味しいし、なんと言っても、大阪の人たちの大阪弁の口調が好き。前向きで明るくて、面白くて、パワフルでとてもチャーミングだと思います」
来阪する時の定宿は、ここリーガロイヤルホテル大阪に決めているというコシノさん。いつもお気に入りの部屋に泊まり、このホテルを拠点にして、仕事やプライベートを楽しんでいるそうだ。
「リーガロイヤルホテル大阪は世界に誇る素晴らしいホテルだと思います。うちの母がこちらのホテルが大好きで、母ともよく泊まらせていただきました。実際にゲストとして利用した印象は、優雅なおもてなしで、それでいて細かい気遣いもちゃんとしてくださり、我が家のような感覚でくつろぐことができますね」
コシノさんデザインの新ユニフォーム。
リーガロイヤルホテル大阪は、今年4月1日にIHGホテルズ&リゾーツのコレクションブランドのひとつである「ヴィニェット コレクション」を導入し、新たなスタートを切った。それに合わせて宿泊部門のユニフォームを一新することになり、そのデザインをコシノさんが手掛けることに。
「伝統と革新の融合」をコンセプトに、10年20年先でも時代を感じさせないシンプルで美しいユニフォームを目指したという。ホテルの制服というのはお客様より目立つことなく、一目でホテルのスタッフということがわからなくてはいけない。また、今回はディレクター、ベルスタッフ、フロントスタッフのユニフォームデザインをそれぞれ手掛けたが、全体としての一体感、ワンチームのまとまりも表現したかったという。
新ユニフォームは、信頼・安心につながるフォーマル性、伝統と歴史を感じる重厚感、そして時代を感じさせないシンプルなデザインとなっている。
「車を降りてロビーでチェックインを済ませて、部屋まで案内される。もう、そのひとときがホテルライフの物語の始まりなんです。ゲストが最初に目にするユニフォームは、その物語にとってとても重要。ですから、美しくて、品があり、男女、年齢、サイズなど、どんな人が着てもすっきりと似合うデザインを追及しました」
ベースの色は、黒よりも柔らかく温かな印象のシックなチャコールグレーで、紫の細いラインをアクセントとして効かせている。紫とグレーの組み合わせは、色彩学的にも優れた配色だという。さらにバックデザインにもチャーミングな仕掛けが…。襟から背中にかけて極細のVラインの切り替えを施し、そこにサテン地を使っているのだが、ライトの加減でVラインがほんのりとした輝きを帯びるのだ。さらに女性スタッフのジャケットは裾にペプラムを加えることで、歩くたびに軽やかな動きが出て、上品な愛らしさを感じさせる。
新ユニフォームはバックデザインが特長的
「荷物を運んでもらったり、お部屋に案内してもらったり、ゲストは意外とホテルスタッフの背中を見ることが多いんです。ですからバックポイントにも華やかさを添えました。京都の西陣織の老舗[HOSOO(ほそお)]が手がけたチェックインカウンターのタペストリーの色をはじめ、このホテルの素晴らしいロビー空間と調和して、最も映える美しいデザインと色彩を心掛けました」
コシノさんが実感しているリアルなホテルの魅力をぎゅっと凝縮したようなデザインは、ゲストに最上の心地よさとくつろぎを与えてくれるはずだ。
万博には世界中から人や、最新の技術やモノや感性が集まってきます。ぜひ地元・大阪の皆さんにこそ、何度も行っていただいて、楽しく盛り上げて欲しいと思います。
コシノさんは「大阪・関西万博」では、シニアアドバイザーのみならず、出展企業パビリオンの一つ、「タカラベルモント」(大阪・中央区)のユニフォームデザインも担当している。同社は1970年の大阪万博にも出展し、当時のユニフォームもコシノさんが手掛けていた。まさに縁(えにし)深き仕事といえる。
「今回の万博のユニフォームのイメージは“未来”です。銀と白で統一し、性別や年齢を問わず着用できるデザインを目指しました。光に反射する素材を使って輝きと存在感のある装いになっていると思います。前回の万博の時、私はまだ20代だったので自分自身が着たいと思うデザインにこだわっていましたが、今回はそういった思いからも自由になり、捉えどころのない遠い未来の世界をイメージしました。ユニフォームは見る側だけでなく、着る側にとっても非常に重要な存在です。ユニフォームを着た途端にプロフェッショナルなスイッチがポンと入って、オン・オフの切り替えがきちんとできることが大事。ユニフォームを着ることで自分が働く場所における責任感とともに、プライドも感じて欲しいと思いました」
エネルギッシュでダイナミック、魅力溢れるここ大阪の地で、地元のホテルや万博パビリオンのユニフォームデザインなど、重要でやりがいのある仕事をさせてもらうことは、人生で一番嬉しく、誇らしい出来事だと話す。
「まだまだ万博は続くので、今後も公私ともに何度も来阪しようと思っています。お宿はもちろん、こちらのリーガロイヤルホテル大阪ですから、心地よいホスピタリティに浸って、エネルギーをチャージして、仕事も万博も目一杯楽しみたいと思います」
コシノジュンコ
大阪府岸和田生まれ。文化服装学院デザイン科在学中、新人デザイナーの登龍門といわれる装苑賞を最年少の19歳で受賞。1978年から22年間パリコレクション参加。NY(メトロポリタン美術館)、北京、ベトナム、ポーランド、キューバ、スペインなどでショーを開催。国際的な文化交流に力を入れる。オペラ「魔笛」や「蝶々夫人」、ブロードウェイミュージカル「太平洋序曲」(トニー賞ノミネート)、DRUM TAOの舞台衣装、スポーツユニフォーム、花火やインテリアのデザイン等を手掛ける他、国内被災地への復興支援活動も行う。VISIT JAPAN大使、2025年日本国際博覧会協会シニアアドバイザー、大阪・関西万博催事検討会議委員、文化庁「日本博」企画委員、文化功労者。2021年フランス政府より「レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ」受賞、2022年「旭日中綬章」受章。
聞き手/郡 麻江
写真/Ichiro Takase(TAKASE OFFICE Inc.)
撮影場所/リーガロイヤルホテル大阪
ヴィニェットコレクション メインラウンジ