PEOPLE

楽曲を通じてアーティストたちの想いを“代弁して言語化する”ことが僕の仕事。

リーガロイヤルのお客様 ヒャダインさん

 アイドルをはじめ、さまざまなアーティストへの楽曲提供で知られるヒャダインさんは、音楽クリエイターとして活躍する傍ら、最近はTVの情報番組でのコメンテーターなど、新たなフィールドへと活動の場を広げている。しかし、ご本人は子どもの頃からずっと“ここじゃない感”に悩んでいたという。そこから今の居場所へと至るヒャダインさんの歩みについてお話を伺った。

アメリカ同時多発テロ事件からもう23年。何をやりたいかもわからなかった僕が、今はなんとか音楽で身を立てている。ニューヨークのブルックリン橋のたもとでぼんやりしていたあの時の自分に言ってあげたいです。

9.11同時多発テロに遭遇して考えた自分の未来

 ヒャダインさんが小さい頃から胸に抱いていたという“ここじゃない感”。中高一貫の進学校から京都大学へと進学する中でも、その答えは見つからなかった。“ここだ!”という居場所も、やりたいことも見つからないまま、大学3回生の時に一人でアメリカのニューヨークを訪れたことで転機を迎える。2週間の滞在中は毎日ミュージカルを見続けて、「明日は帰国!」という日が2001年9月11日、まさに、アメリカ同時多発テロ事件の日だった。

「街中がごった返している中、ブルックリン橋のたもとで“人はいつ死ぬかわからない。これからの人生は好きなことで身を立てたい”という思いが湧いてきて、自分の好きなことって何だろうと考えたら、それが音楽だと気付いたんです」

 大学卒業後に上京し、ゲームソングをアレンジした曲をニコニコ動画に配信したことがきっかけで、音楽業界への扉が開かれた。東方神起によるアニメ「ワンピース」の主題歌や、倖田來未とmisonoのデュエットの曲など、大きな仕事が次々と決まっていく中で、目の前の仕事にひたすら取り組み、成功へのステップを着実に歩んでいった。

無理して頑張らなくていい。単一の思考から解き放たれるとき

京都大学在学中は、髪を染めてピアスをしてアカペラサークルで活動していたこともあるという。

 ヒャダインさんは楽曲をつくるとき、歌手本人と話をしたり、ライブに行ったり、できるだけ彼らに触れてその魅力を最大限に引き出したいと考えている。最近では、ボーイズグループ「THE SUPER FRUIT」の配信シングル『どーぱみんみん あどれなりんりん』を手がけた。

「彼らは多様性という言葉すらもう古いα世代で、みんな違って当たり前という感覚が自然にあるんです。その等身大のあっけらかんとした気持ちを、僕が代弁して楽曲にのせてたくさんの人に伝えたいと思いました」

 今後、やってみたいことは?と尋ねると、「僕、今までも、これからも、そういうのは全然、ないんです(笑)」と軽やかな答えが返ってきた。

「目の前に来た仕事に全力投球して120%お返しすることが命題だと思っています。日本人って小さい頃から、目標を定めて頑張ることが大切だと言われ続けるけれど、そろそろ単一の思考から解放されていいのではと思うんです。“目標を無理に作る必要はないし、頑張らなくてもいいんじゃない?”というメッセージが、僕の創作のベースなのかもしれません。丸く言えば“あんまり頑張りたくない”っていうことなのかも……(笑)」 

さらりと面白さを添えて、心地よく“刺さる”楽曲を

2024年5月、「SUPER EIGHT」×「 WEST.」× 「なにわ男子」の3組のコラボレーション「KAMIGATA BOYZ」の「無責任でええじゃないかLOVE」を作詞作曲したヒャダインさん。“底抜けに明るく、歌って踊れる西からの贈り物的な一曲”だという。2025大阪・関西万博での活躍も期待できそうだ。

 大阪出身のヒャダインさんは、大阪のリーガロイヤルホテルを何度かご利用いただいているようだ。

「昨日もフレンチレストラン「THE RAY」で食事をしました。シャボン玉のようなバブルを割って食べる料理や天目てんもく茶碗で出されるスープなど、感動の連続でした。倉員くらかずシェフが“食べることって楽しい!”ということを体現されているのだと感じ、“何か面白いことをしようよ”というシェフの感覚に共感しています。僕の楽曲も、誰かが癒されたり、楽しんでもらえたりしたら嬉しいですね」

 爽やかに微笑みながら丁寧に言葉を紡ぐヒャダインさん。年齢に関係なく、いろいろ頑張って疲れてしまった今の日本人には、そんなヒャダインさんの曲がいい意味で心に刺さるのかもしれない。

ヒャダイン(前山田 健一)

 1980年大阪市生まれ。3歳の時にピアノを始め、音楽キャリアをスタート。作詞・作曲・編曲を独学で身につける。京都大学を卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。動画投稿サイトへ匿名のヒャダインとしてアップした楽曲が話題になり屈指の再生数とミリオン動画数を記録。一方、本名での作家活動でも提供曲が2作連続でオリコンチャート1位を獲得。アイドル、J-POPからアニメソング、ゲーム音楽など多方面への楽曲提供を精力的に行い、自身もアーティスト、タレントとして活動する。

 (聞き手/郡 麻江 写真/川隅 知明)

撮影場所/リーガロイヤルホテル(大阪) メインラウンジ

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