焼き筍に春香る牛肉を添えて

「日本料理 なかのしま」が春にお薦めするのは、春味満載の焼き物。旨み深い合わせ味噌で、ここだけのおいしさに仕立てています。

ふわりと鼻をくすぐる、新緑を思わせる爽やかな香り。炭火で焼いて甘みを引き出した香ばしい焼き筍の下に敷かれているのは、オリジナルの合わせ味噌と、軽く炙った朴葉の青葉です。「朴葉味噌焼きは、飛騨高山の郷土料理。秋の枯れ葉を使うのが一般的ですが、春先の青葉ならではの清々しい香りもまた、筍によく合うんですよ」と、副料理長・竹之内たけのうち猛友たけともは話します。

　実は飛騨は、日本料理総料理長・平野ひらの規元のりともがかつて研鑽を重ねた想い出の地。その縁あって、飛騨から取り寄せた味噌をベースに白葱と椎茸などを練り合わせた自家製合わせ味噌を昔から愛用。四季折々の食材と合わせながら田楽や煮炊き物などに幅広く活用しており、今回の焼き物もそのひとつです。

｢春をより贅沢に感じていただきたくて｣と、炭火焼きにした筍と空豆に添えたのは、フキの青煮をくるりと巻いた牛肉。しゃぶしゃぶ用の黒毛和牛ロースを使用しているので、柔らかくて旨み豊か。山菜らしさが生きるよう繊細な味付けと火入れを施したフキのシャキシャキ感とほろ苦さが、口中においしい春を再び届けます。