ART

カウンターを鮮やかに彩る5面の舞扇

ROYAL GALLERY ロイヤル ギャラリー

リーガロイヤルホテル小倉「皿倉」天ぷらカウンターの「飾り舞扇」。絵柄は、上段左から「桜/桔梗」「桜/紅葉」、下段左から「正倉院」「萩/梅」「八重桜/裏は銀箔」。

 九州の豊かな自然に育まれた海と山の幸をふんだんに使った四季折々の日本料理と、地酒が味わえる「皿倉さらくら」へのアプローチは和の趣に満ちています。その風情を楽しみながら歩を進めると、やがて見えてくるのが天ぷら専用のカウンター。後方の壁面には、色とりどりの舞扇まいおうぎが飾られています。

 5 面の扇は、京都で 1823(文政 6)年に創業した扇の老舗「宮脇賣扇庵みやわきばいせんあん」の品。1993(平成 5)年、リーガロイヤルホテル小倉の開業時から、おもてなしの場を華やかに彩っています。
地紙に金箔や銀箔を押した舞扇の図柄は、4 面が桜や紅葉、桔梗などの季節の植物を繊細に描いたもので、残りの 1 面は格調高い正倉院柄。いずれもわずかな落剝はあるものの、30余年も前の作品とは思えない美しさを保っています。

秋が近づくと出番となる紅葉柄の舞扇。裏は桜が描かれていて、日本の春と秋を彩るモチーフを両面に配していています。

 表と裏には異なる柄が描かれているので、季節に合わせて見せる面が選べるのも特長。舞踏に用いる舞扇は両面を同柄に仕立てますが、昭和以降は装飾目的の購入が増加。「宮脇賣扇庵」では異なる絵柄を描くようになりました。
 木を重ねたり紙を折りたたんだりして「要」で留めた扇は日本発祥の道具です。平安時代初期、檜の板に書き付けた文書(木簡)を要で留めるという檜扇ひおうぎから始まり、やがて儀礼や贈答、能、舞踊、歌舞伎や落語などの多様な場で、幅広く使われるようになりました。
 日本人の主食である米は 88 の手間をかけて育てると言われますが、扇も 87 の工程を必要とし、数カ月の時をかけて幾多の職人の手を経て、その優美な姿は作り出されます。
 「皿倉」の店内には、ほかにも多くの工芸品が飾られていて、アートと九州ならではの旬の食材の共演が、訪れる人の目と舌を楽しませてくれています。

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