ARTROYAL

吉田五十八の「空間」に、一面の紅葉がよみがえる。

※当記事は冊子『The ROYAL』2019年夏号でご紹介した内容です。

Treasures of The ROYAL
-リーガロイヤルホテル(大阪)のたからさがし-

錦秋の大緞通

【2019年/リーガロイヤルホテル(大阪)】

 能装束に着想を得たとされる華々しい紅葉柄。国内のホテルの歴史上でも画期的な事業だった大阪ロイヤルホテル新館(現・タワーウイング)の完成時(1973年)から2007年まで、メインロビーを彩る緞通だんつうに用いられていた図案です。日本芸術院会館や秩父宮邸を手がけ、ホテルの設計を担当した建築家・吉田五十八よしだいそや(1894~1974)が「万葉の錦」と呼んだように、数多の紅葉が一面を流れていきます。時候の挨拶にも用いられ、紅葉が鮮やかに色づく季節を示す「錦秋きんしゅう」。その姿を体現した緞通が、デザインを一層大胆にアレンジされてよみがえり、リーガロイヤルホテル(大阪)のロビーに再び敷き詰められています。

 紅葉の川に踏み入れば、足元を包み込む柔らかさに驚きます。重厚感と美しい色柄は、人の手で染め糸を打ち込んでいく手刺の手法によって生み出されたもの。10色の染め糸を使い、何人もの職人の手で3カ月をかけて仕上げられました。

 職人の手仕事を取り入れ、「民藝」や日本の伝統様式に親しみつつ国際的でモダンな建築に挑戦した吉田五十八の先進性とセンスは、ロビーやラウンジに並ぶ金蒔絵きんまきえ柱にも表れていますが、その意思を継ぐ逸品が、訪れる人々を迎えます。

※当記事は冊子『The ROYAL』2019年夏号でご紹介した内容です。
Share
Like