ARTROYAL

日本庭園に浮かぶ静謐な異空間。

※当記事は冊子『The ROYAL』2020 年夏号でご紹介した内容です。

Treasures of The ROYAL
-リーガロイヤルホテル(大阪)のたからさがし-

そのホテルには「ロイヤル」の名がふさわしい。
1935年、大阪の中之島に誕生したホテル。
目指したのは、日本の伝統的な芸術や文化を取り入れ空間から食までこだわり抜かれた、世界中の賓客を受け入れる場所でした。
絢爛豪華につくり出された至極の空間に、「たからもの」と呼ぶにふさわしいものが生み出され現在まで受け継がれています。

ラ・ロンド

「オールデイダイニング リモネ」から望む日本庭園の一角、木々や竹が生い茂る青々とした景色の中に、ガラス張りの空間が見えます。

 小橋を抜けた先に広がるのは、洞穴のような、宇宙船の中のような、何とも幻想的な360度の円形空間。中心に天井とひと続きになった朝顔型の柱がそびえ、その表面は細かいガラスタイルが紫のグラデーションを描いています。

 現在、ダイニングの一部となっているこの場所は、1965年の大阪ロイヤルホテル開業時にバー「ラ・ロンド」としてオープン。吉田よ し だ五十八い そ や氏が陶芸家、バーナード・リーチ氏の意向を取り入れて設計し、独特な空間が生まれました。職人の手で一つ一つ貼られたガラスタイルには、やはり民藝的なセンスが感じられます。

 内装のインパクトに反して、中から周囲を見渡せば、豊かな緑に爽やかな水の流れ、明るい光に包まれて心が落ち着いていきます。
賑やかで活気のあるダイニングから一歩だけ離れ、ゆっくりと深呼吸をしてみたくなる。庭に浮かんだ茶室のような趣で、50年以上にわたって特別な場所であり続けています。

※当記事は『The ROYAL』2020年夏号でご紹介した内容です。
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