ARTROYAL

表情を変え、優雅にたなびく紫の雲

※当記事は冊子『The ROYAL』2009年9・10月号でご紹介した内容です。

The ROYAL SIGN ザ・ロイヤルサイン
-リーガロイヤルホテルのたから探し-

 メインラウンジを微妙なアールを描いて流れ、屋外の日本庭園に落ちる「曲水ごくすい」に対し、その「空」つまり吹き抜けの天井には印象的なシャンデリアが輝いている。

 このラウンジの建築デザインテーマは、「自然と人工的な建築空間の接点の融合」とのことであるが、多田美波ただみなみ女史によるこのシャンデリアがそのテーマを雄弁に物語っている。それは「紫雲しうん」であり、長さ約10センチの小さな棒状クリスタルガラスを4万5000本の鉄線に25万個つるして電球を覆い、21の紫雲を形作っている。

 1階メインラウンジからは見上げるかたちで、また2階宴会ロビーからは目線の高さで、雲がたなびく姿が見られ変化に富んでいる。仏が来迎する際に乗るという紫雲は、幻想的であるがどこか写実的な趣も感じられる見事な作品である。

 ちなみに彫刻家としての多田氏は1979年に第1回ヘンリー・ムーア大賞展大賞を受賞。リーガロイヤルホテル内には、ほかに宴会場の光琳の間やダイヤモンドルームのシャンデリアも手がけている。

(文/江 弘毅 写真/ハリー中西)

※当記事は冊子『The ROYAL』2009年9・10月号でご紹介した内容です。
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