
本と出会い東京の歴史に思い巡らせる
芝パークホテルからはじまる旅
2024年秋、東京都港区の芝パークホテルとパークホテル東京が、リーガロイヤルホテルグループに加盟しました。今回は1948年創業という歴史を持ち、近年はライブラリーホテルとして唯一無二の滞在体験ができる芝パークホテルと周辺の観光スポットを、2025年に出版社ビーコンを立ち上げた編集者の石垣 慧さんに案内してもらいます。
歴史を感じる館内で読書の楽しみに触れる
芝パークホテルは、地下鉄三田線「御成門」駅から徒歩約2分、JRやモノレール「浜松町」駅からも歩いて10分はかからないという好立地。外国貿易使節団向けのホテルとして始まった歴史があり、芝公園や増上寺、東京タワーなどのランドマークとともに、東京・港区の町の隆盛を支えてきました。現在はライブラリーホテルとして生まれ変わり、「本に囲まれた滞在」をテーマとする新たな宿泊体験が注目を集めています。
ホテルに着いたら、まずはエントランスからライブラリーラウンジへと足を運んでみましょう。ここには銀座「蔦屋書店」が選び抜いてキュレーションしたアートブックから絵本、貴重な洋書まで多様な書籍が揃います。奥のレセプションルームは、かつて同ホテルで長く愛されてきたバーを改装した設え。伝統を感じさせる瀟洒なカウンターではコーヒーやソフトドリンクのほか、セレクトワインや国産クラフトビール(有料)も提供されており、飲み物片手にラウンジで読書三昧…という楽しみ方もできます。
続いては、壮麗な噴水が目を引く大階段へ。壁沿いの書棚には過去から現在、未来に関連した日本のアートブックや名著が飾られています。こちらは、フォトジェニックなスポットとしても大変人気があるのだとか。大階段を上った先にある2階・ホワイエにも、コンシェルジュによる選書の光る本棚が人気を集めていました。宿泊フロアにも本棚とカウチが設けられた、スコットランド語を語源とする「イングルヌック」と呼ばれるこぢんまりした寛げる小スペースが各階に設けられています。気に入った本は、ラウンジや客室に持ち込んで自由に読むことができるので、「図書館のようなホテル」という評判にも納得。滞在するたび、思いがけない一冊との出会いが期待できそうです。
極上のアフタヌーンティー体験
お気に入りの本が見つかったら、レストラン「ザ ダイニング」で人気を博している「至福のアフタヌーンティー」を。和・洋・中それぞれのシェフの技術の粋を凝らした極上スイーツがティースタンドに集まった、贅沢な午後のティータイムを堪能できます。
まずは席に着いたら、季節限定のウェルカムドリンクを。テーブルに用意された古めかしい洋書型の箱を開いてみると、なんとも愛らしい茶葉入りのケースや星形のお砂糖が出てきました。ここから好きな香りをテイスティングしてドリンクを選べるというのは、嬉しい驚きです。ドリンクはダージリン、アールグレイなどの定番紅茶からブレンドティー、和紅茶、桂花烏龍茶まで12種類の茶葉に加えてコーヒーやカフェオレまで揃っています。
さらに、「ザ ダイニング」厳選の多様なティーカップが洋の東西を問わずずらり。こちらもご用意いただいたティートロリーから自由に選ぶことができます。至れり尽くせりのサービスで、時間内であればドリンクのお代わりは自由に注文できるというのも心躍るポイントです。
特別な砂時計でゆっくりと茶葉を蒸らして待つ至福のひと時。淹れたての紅茶に、自家製ジャムやクロテッドクリームを添えたスコーンを頬張り幸せが満ちてきます。さらには、季節ごとに表情もさまざまな和・洋・中のスイーツ+セイボリーには、一期一会の驚きと感動が詰まっています。極上の茶葉に包まれた香味とスイーツを楽しみながら、持ち込んだ本を片手に読書を楽しむ。そんな“自分へのご褒美時間”をぜひ、体験してみてください。
「東京」と「江戸」が交差する場所、芝エリアを探索
芝パークホテルは、徳川将軍家の菩提寺・増上寺の大門からほど近いロケーションにあり、東京タワーも徒歩圏内です。目覚ましい発展を遂げる現代東京と、かつての江戸情緒が交わる場所。そんな特別な芝エリアを散策する時、ぜひ立ち寄ってみたいスポットをピックアップしてみました。
ユネスコ登録が注目を集める、徳川将軍家ゆかりの名刹【増上寺】
増上寺は、浄土宗の大本山の一つであり、徳川家の菩提寺として約600年の歴史を持つ名刹です。都市の喧騒から離れて静かな境内へ入っていくと、荘厳な大殿の背後に東京タワーが。江戸の面影と、現代の象徴が交差する光景はまさに圧巻です。歴史好きにおすすめなのが境内に併設された「増上寺宝物展示室」。英国ロイヤル・コレクション所蔵の「台徳院殿霊廟模型」の他、寺に伝わる文化財や宝物を展示しています。静寂と重みをまとったこの地で、時の流れに思いを馳せる。そんな穏やかな旅の一時を、ぜひ体感してみてください。
リニューアルしたツアーは必見!新たな魅力満載のランドマーク【東京タワー】
高さ333mを誇る東京タワーは、誰もが知る東京のランドマーク。その姿を眺めるだけでも十分魅力的ですが、実は上がってみてこそ味わえる特別な体験が詰まっています。2024年10月にリニューアルした「トップデッキツアー」は高さ250mのトップデッキにジオメトリックミラーとLED照明、光(ひかり)畳(だたみ)を設え、きらめく摩天楼を幻想的に演出。東京湾まで見渡せる360度のパノラマが、昼と夜とで全く異なる表情を見せてくれます。専属アテンダントの案内のもと、エレベーターで上昇していく高揚感は、まさに唯一無二。タワー内では東京土産がずらり揃ったショップや個性豊かな店舗が揃ったフードコートも充実しています。ホテルステイの合間に、東京をちょっと上から眺めてみる、そんな”非日常”な一コマにきっとあなたも魅了されるはず。
野菜の美味しさを追求した東京新感覚のスイーツ【麻布野菜菓子】
「野菜で作ったちょっとだけ贅沢なお菓子」。そんなコンセプトに心惹かれて訪れたのは、東京メトロ南北線・都営地下鉄大江戸線「麻布十番」駅すぐの麻布野菜菓子。今回は看板商品の一つ「野菜のフィナンシェ」をいただきました。北海道日高産バターをたっぷり使って焼き上げた商品で、トマトやほうれん草、かぼちゃ、紫芋、ごぼう、生姜などの彩り豊かな6種類のフレーバーが揃います。なかでも印象的だったのは、堀川ごぼうを使ったという「ごぼう」味。ココアやラムレーズンのトッピングが、ごぼうの穏やかな甘みと重なり合う風味は、他では味わえない美味しさです。「野菜の味をしっかりと引き立たせられるよう、素材との相性を何度も追求しました」と語るのは、店主の花崎年秀さん。インテリアやパッケージまで店長自ら手がけた空間には、確かな情熱と美意識が息づいています。
東京割烹の名店が手がける絶品かき氷【くろぎ甘味研究所】
格別の「涼」を求めて訪れたのは、日本料理の名店「くろぎ」が2024年にオープンしたくろぎ甘味研究所。本店の人気メニューでもある「かき氷」を専門に提供するお店として、行列の絶えない人気を誇ります。今回注文したのは定番の「抹茶」。ボリューム感たっぷりのかき氷は、丁寧にろ過した純氷を用い、濃厚な抹茶にクリームや煎り玄米をあしらった大満足の3層構造。口に運べば、ふわりとほどける雪のような食感にまず驚き、食べ進むごとに新たな風味が重なる仕掛けも。最後の一口まで飽きさせることのない計算された味わいに思わず唸ります。
実はこちらの「甘味研究所」では、精進料理の伝統を活かして、「抹茶」と「黒胡麻」はヴィーガンメニューとなっているのだそう。一流店の佇まいを窺わせるカウンター席(※予約推奨)でゆったりするも良し、散策がてら気軽にテイクアウトして芝公園で食べるのも楽しいです。プレミアムな甘味を求めて何度も足を運びたくなるお店です。
写真/photo office moonlit 中西ゆき乃(芝パークホテル)
松本 瑞生(東京タワー、麻布野菜菓子、くろぎ甘味研究所)

芝パークホテル
TEL 03-3433-4141
東京都港区芝公園1-5-10
増上寺
東京都港区芝公園4-7-35
TEL03-3432-1431
芝パークホテルより徒歩約3分
東京タワー
東京都港区芝公園4-2-8
TEL03-3433-5111
芝パークホテルより徒歩約10分
麻布野菜菓子
東京都港区麻布十番 3-1-5
TEL03-5439-6499
芝パークホテルより都営地下鉄大江戸線「赤羽橋」駅へ徒歩約8分
都営地下鉄大江戸線「赤羽橋」駅から「麻布十番」駅まで1駅、1番出口より徒歩約1分
くろぎ甘味研究所
東京都港区芝公園1-7-16 GRANDLUXE芝大門 1階
TEL 03-6381-5721
芝パークホテルより徒歩約3分
ー 旅する人 ー

石垣 慧 さん
1991年静岡市生まれ。大阪府立大学院を卒業後、福祉法人や雑誌編集を経て2025年に出版社ビーコンを立ち上げる。編集・校正・執筆で幅広く活動中。編集として『文集 私の生存戦略』(生活綴方出版部)、『The Traveler’s Tabloid』シリーズ(DriveD Inc.)ほか、校正として『らせんの日々』(ぼくみん出版会)ほか。現在は横浜・妙蓮寺在住。即興バンドでのギタリストとしても活動中。