リーガロイヤルホテル小倉は僕の“小倉の家”。ここしかないからしょうがない!
リーガロイヤルのお客様
リリー・フランキーさん
俳優、作家、イラストレーター、MC、パーソナリティと多才に活躍中のリリー・フランキーさん。「面倒臭い」が口癖だけれど、お話は故郷や友だちや仕事関係者への愛が溢れるものばかりだった。
郷土愛は極めて希薄、、、でも血は抗えないね。
「あ~、この部屋、前にドラマのロケで使わせてもらったとこだ」
リリーさんはリーガロイヤルホテル東京のスイートルームに入って来ながら思い出したようだ。
「僕が売れっ子脚本家の役で、この部屋に缶詰になってるところに弁護士役の岡田将生くんがバーンって来て。ロビーとかラウンジも使わせてもらったんですよ」
2019年にテレビ朝日系で放送された『離婚なふたり』の時だ。
「それから、僕がミッツ(マングローブ)たちのユニット『星屑スキャット』の作詞とかを始めたとき、最初にディナーショーをやらせてもらったのもこのホテル。星屑のディナーショーはまだ続いているでしょう?」
さらに、リリーさんの故郷にあるリーガロイヤルホテル小倉では超常連のお客様でもある。
「田舎に帰っても実家もないので、泊まるとこはリーガしかない。今までで100泊以上してると思う。2泊のつもりで行っても連泊するときのほうが多い。昔は昼の12時になっても起きなきゃホテルの人は今日も泊まるんだろうな、とわかってくれていて電話もしてこなかった。最近は電話してくるようになりましたけど(笑)。同じホテルにこんなに泊まることなんてこれから先もないと思うから、勝手に縁を感じてます」
小倉に帰るのは仕事が多いという。
「北九州市文学館の『子どもノンフィクション文学賞』の審査員をやっているので、その審査会と表彰式で確実に年2回は小倉に帰る。それから僕は北九州市ができた年に生まれたから同い年ってことでイベントに呼ばれがち。僕は郷土愛みたいなものが極めて希薄な方だと思うけど、それでも地元の仕事だと断りにくくて、やってしまうというのは一つの郷土愛なんでしょうね。血は変えられないというか、抗えないね」
小倉には遊びにも帰るそうだ。
「東京にいても休んでる気がしないから、地元の友だちと遊ぶために帰っている。正月は里帰り。最近のパターンとしては、東京が実家のやつらって里帰りって概念がないから、僕の里帰りについてくる。小倉はどんどん街が小さくなってる感じがして、それでいいんです。ちょっと物足りないと感じる街の方がいて楽しいですよね。東京の友だちも博多より小倉を面白がる。東京にはない空気感があるから」
「残念なのは、商店街の火災やコロナなんかで、この数年で昔ながらの飲食街とか古い映画館が一気になくなってしまったこと。バラックでおばあちゃんが1人でやっていたバーとかおばあちゃんと息子がやっていた鰻屋とか。80年ぐらいやっていた映画館が燃えたときは再建のサポートをしましたけど」
全焼した映画館「小倉昭和館」の三代目館主、樋口智巳さんが再建への第一歩として無声映画鑑賞会を開いたのもリーガロイヤルホテル小倉だった。その後、リリーさんのような支援者やクラウドファウンディングなどによって「小倉昭和館」は被災から1年4ヶ月後に再建され営業を続けている。
年を取ると外に出るのが億劫だから、物を書く仕事に戻したいな
リリーさんは俳優としても引っ張りだこで、最近は海外の映画に出ることも多い。『愛の不時着』のヒョンビンと共演した韓国映画『ハルビン』、日本・イギリスの合作映画『コットンテール』、日本・マレーシア・フィリピン共同制作の『DIAMOND IN THE SAND』など。
「去年は僕が出た映画が海外で一斉に公開されて、舞台挨拶なんかで7ヶ国ぐらい行ったんですよ。海外の人と日本の人では僕の見え方が違うんだろうなぁ、というのはオファーされる役柄でわかります。海外の人と向こうで仕事するのは留学させてもらってる感じ。映画の撮り方も違うし、仕事の仕方とか習慣とか文化などを教えてもらえる」
もともとは武蔵野美術大学を卒業後、イラストレーターとして創作活動をはじめ、その後、2005年に作家として出した小説『東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~』が200万部を超える大ベストセラーになった。
「これを書籍にしてから実際に手で書く連載は全部やめているんです。面倒臭くなって。2000年前後は連載など月に45本ぐらいあって、原稿の数で言ったら100本以上書いてたけど、今は作詞するぐらい」
ただ少し風向きが変わってきたようだ。
「まだ本にしていない短編小説が何本かあって。その担当編集者だった方が定年退職されたんだけど、この人が生きているうちに本にしなくちゃなとは思っている。それには150~160枚ぐらいのものをもう1本書かないと足りない。それを書いてみようかなぁ、、、と。年を取ると外に出るのが億劫なんです。だから、物を書く仕事に戻したいなとは思っている。ただ原稿書くのって知力じゃなくて体力なんですよ。書くほうが根性がいる」
リリーさんに「根性」という言葉は似合わないような気もするが、ここは一つ「根性」を出して新作を読ませていただきたい。似合わないと言えば、お洒落なリリーさんがテーブルの上に出したのがスヌーピー柄のポーチ。スヌーピー好きで友だちがいろいろプレゼントしてくれるのをちゃんと使っている。
そのポーチに「JISOO」とデザインされたキーホルダーのようなものが2つ付いている。何かと尋ねたらK-POPのガールズグループのグッズだった。
「BLACK PINKのジスのだよ。Netflixの『地面師たち』の撮影をしていた時、スタッフに『BLACK PINKの大阪のライブに行くから僕を午前中の新幹線に乗せてくれ』と頼んだら、『ダメです。ありえねぇ』と。『じゃ、今日は行かない』となって撮影をバラし(中止)にしてしまった。でも、僕の好きなジスがコロナでいなくて3人のBLACK PINKを見て、その後ジス1人のファンミーティングに行って、そしてついに明後日、4人が合体したBLACK PINKの完全体が見られるんです!!」
パチパチパチ、おめでとうございます、、、じゃない。撮影をなくさせてしまったとは!?
「日本の映画も体育会系の撮影はやめたほうがいい。結局、スタッフも休めたし、いいことばかりなんですよ。」
まったく悪びれない。実はこの取材日、リリーさんはつけ麺を食べに寄って遅刻してきた。
「面倒臭いからもう帰っちゃおうかと思ったけど、前に1本仕事して目が覚めてたから理性が働いて行くことにしたんです」と。なぜかこちらが「来てくださってよかった。ありがとうございます」とお礼を言うことになった。「ん?何かヘンだな」と思いつつ憎めない。
大ベストセラーを出しても、日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を取っても、ちっとも偉ぶらない。厳しいことを言っても優しい声と穏やかな話し方で角が立たない。司会をしているときには細やかな気遣いも感じる。この方、希代の“人たらし”と見た。今回も最後に言ってくれたのは、、、。
「リーガは僕の『小倉の家』だもんな。全然いい意味で言ってないからね。『リーガは僕の故郷の家です』みたいないいこと風に書いても削りますから。ここしかねぇから、しょうがないから、断腸の思いで泊まってる。まぁ、ホントの意味の家ですよね」
さて、この一文を削ってくるかどうか、人たらしのお手並み拝見。
聞き手/柴口 育子
写真/中西 ゆき乃
撮影場所/リーガロイヤルホテル東京 クラウンスイート
リリー・フランキー
1963年生まれ、福岡県出身。
イラストやデザインのほか、文筆、写真、作詞・作曲、俳優など、多分野で活動。初の長編小説「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」は06年本屋大賞を受賞、また絵本「おでんくん」はアニメ化された。
映画では、『ぐるりのこと。』(08/橋口亮輔監督)でブルーリボン賞新人賞、『凶悪』(13/白石和彌監督)と『そして父になる』(13/是枝裕和監督)で第37回日本アカデミー賞優秀助演男優賞(『そして父になる』は最優秀助演男優賞)など多数受賞。第71回カンヌ国際映画祭では、主演を務めた『万引き家族』(18/是枝裕和監督)がパルムドールを受賞。
リーガロイヤルホテル小倉
TEL 093-531-1121
福岡県北九州市小倉北区浅野2-14-2
リーガロイヤルホテル東京
TEL 03-5285-1121
東京都新宿区戸塚町1-104-19