LIFE

人生で忘れられない食体験を演出、レストランサービス

The ROYAL ISM ザ・ロイヤルイズム Vol.4

ホテルのさまざまな分野で活躍するスタッフの現場風景やエピソードを伺いました。

 リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション 「レストラン シャンボール」のサブマネジャー岩本 啓史ひろふみさんが、2025年11月に開催された世界基準レストランサービスコンクール「第21回メートル・ド・セルヴィス杯」において、見事優勝に輝きました。“メートル・ド・セルヴィス杯”とは、一般社団法人フランスレストラン文化振興協会(APGF)主催によるもので、日本で唯一となる国際基準のレストランサービスコンクールです。優勝を果たした岩本さんに、レストランサービスへの思いを伺いました。

高校生の時に見たソムリエの姿に憧れてホテリエに

 ホテルの仕事を目指したきっかけは、高校生の時に東京の一流ホテルでソムリエをされている卒業生の方の講演を聞いたことです。スライドで仕事中の写真が映し出されたのですが、襟に金色の葡萄のバッジを付けて、ソムリエコートに黒いタブリエ(エプロン)でサービスをされている姿がとてもかっこよく見えました。‟自分もあんな風になりたい”と憧れて、ホテリエを目指しました。

 2012年、株式会社ロイヤルホテルに入社後は、宴会でのサービスを担当。その後、第1希望だったレストラン部門に配属されました。ソムリエになりたいという思いはずっと持ち続けていたので、2018年にソムリエ資格を取得、2020年に岡マスターソムリエが率いるソムリエチームに加わり、実地でソムリエの仕事とワインの勉強をしました。知識や技術だけでなく、ソムリエとしての哲学や精神まで間近に見ることができ、本当に勉強になりました。

 その後、2022年に念願の「レストラン シャンボール」に配属となりました。「レストラン シャンボール」は料理のクオリティはもちろん、伝統と格式、格調高いサービス、お客様の層の厚さや空間の素晴らしさなど、私にとって全てが憧れのレストランでした。現在は「レストラン シャンボール」のサブマネジャーとして、全体を統括しています。料理やワインのことはもちろん、調理スタッフときちんと連携できているか、また、ご予約のお客様の情報もしっかりと把握するように努めています。まだ道半ばですが、私にとっては職場でもあり、学びの場でもあり、そして今、ようやく後進に何かを伝える場にもなってきたかなと思っています。

 ソムリエとしてワインを学ぶうちにチーズへの興味も深まり、2021 年にチーズプロフェッショナルの資格も取得。というのも、「レストラン シャンボール」では、チーズのワゴンサービスを提供しており、お客様に喜んでいただける提案ができるよう、チーズの知識も深めたいと考えたことが資格取得のきっかけです。ある時、お二人で来店されたお客様で女性の方が、「チーズが少し苦手で、特にクセのあるチーズは難しい」とおっしゃるので、このようなご提案をさせていただいたことがあります。

 ヤギのチーズにはフレッシュなオリーブオイルを垂らして、またブルーチーズには細かく砕いたナッツを練り合わせて、「ご無理はなさらなくて結構ですよ」と申しあげてご提供したところ、「すごく美味しかった。今まで食べなかったことがもったいないくらい!」と大変、喜んでいただきました。苦手な物が好きな物に変わる…、マイナスをプラスに変えることができるサービスの力と可能性を実感し、とてもやりがいを感じました。

イラスト/千秋 育子

コンクールの優勝から見えてきた課題と目標

 今回の「第21回メートル・ド・セルヴィス杯」は、予選では「筆記試験」と「実技審査2種」があり、準決勝は、「筆記試験」と「実技2種」「外国語会話」「オーダーテイク」の5課題で審査が行われました。当ホテルからは2000年と2017年に優勝者が出ていて、前回、優勝された先輩の中林大治なかばやしだいじさんからは事前にいろいろと助言をいただき、難関の準決勝をなんとか突破して決勝審査に臨むことができました。

 決勝は模擬レストランで、各選手が1名のコミ・ド・ラン(アシスタント)とともに1卓3名のお客様にフルコースを提供するのです。ゲストのお迎えから、コミ・ド・ランへの指示・協調性、テーブルセッティング、器材の準備、料理とサービスの知識、お客様との会話力、お見送りまで、サービスの総合力が審査の対象です。一番、難しかったのが、初対面のコミ・ド・ランとの連携でした。コミ・ド・ランは接客業務におけるサポート役で、細かく指示を出すようにしていたのですが、コミ・ド・ランにパン用のバターを持ってくるように頼んだら、デザートのフランベ用のバターを持ってきてしまったのです。あの時は冷や汗をかきました。今、振り返れば、コミュニケーション力や、何か不測の事態が起きた時の対応力などもチェックされていたように思います。「レストラン シャンボール」でも、サブマネジャーとして多くのスタッフを統括している立場ですので、この試験を通して、チームワーク、チームプレイの大切さを改めて実感しました。

 最終審査には5名が残っていて、結果発表は3位から順に名前を呼ばれるのですが、最後に名前を呼ばれた時は、まさか自分が優勝するとは思っていなかったので、感動よりも驚きの方が大きかったです。このような素晴らしい挑戦ができたことに感謝しています。

 実は今回のコンクールで見えてきた課題があります。それは英語での指示や説明の難しさです。今、「レストラン シャンボール」のお客様は日本人の方が多いのですが、いつか世界から注目されるレストランにしていきたいと思っていますので、そのためにも外国語によるサービスの充実が不可欠です。今後は、海外研修にもチャレンジしたいと思っています。

グランメゾンのサービスとは

 グランメゾンにおいて、私がいつも心がけているサービスは“空間を提供する”ということです。最上級の食器やカトラリーなどの調度品があっても、また、有名な絵画が飾られていても、それだけではグランメゾンならではの、研ぎ澄まされ、それでいて温かな寛ぎを感じさせる、あの空気感は生まれないと思うのです。大袈裟な表現になりますが、私たちサービススタッフの立ち居振る舞いやサービスが空間に命を与え、初めてグランメゾンらしい唯一無二の空間になり得るのではないかと思います。

 私自身、毎日必ず、全てのテーブルにご挨拶に伺うようにしています。ご家族での食事や、仕事関係の会食をはじめ、時にプロポーズのサプライズといったスペシャルなご要望を受けることがありますが、テーブルごとに「今日、お客様はどのような時間をここで過ごされたいのか?」を一番に考えて、料理を出すタイミングやサービスの采配を考えるようにしています。言わばオーケストラの指揮者のように、各パートの奏者であるサービススタッフをまとめて、一つの素晴らしい交響曲をお客様にご堪能いただく、そんな気持ちで日々の仕事に向き合っています。

 このレストランを選んでいただいたお客様お一人おひとりに、「人生の中で忘れられない食体験」をしていただきたい。その思いを胸に、これからもしっかりと仕事をしていきたいと思います。

文/郡 麻江

リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション
レストラン シャンボール

TEL 06-6448-0354(レストラン総合案内 10:00~18:00)

大阪市北区中之島 5-3-68 イーストウイング29階

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