“NOと言わない”「ロイヤルクラブ」のおもてなし
The ROYAL ISM ザ・ロイヤルイズム Vol.3
ホテルのさまざまな分野で活躍するスタッフの現場風景やエピソードを伺いました。
62室のみのクラブフロア『ロイヤルクラブ』では、心のこもったおもてなしで、滞在中は上質なひとときを過ごすことができます。数多くの賓客をお迎えしてきたリーガロイヤルホテル大阪ならではの伝統的で美しいホスピタリティ、忘れがたい格別なホテルライフのひととき。それらをお客様にご提供するためにスタッフは日々、心を込めてお客様をお迎えしています。今回は、前身のクラブフロアである「ザ・プレジデンシャルタワーズ」、リニューアルオープンした「ロイヤルクラブ」で20年以上お客様をおもてなししている支配人の西谷 美紀さんにお話を伺いました。
「私たちはお客様からのリクエストに対して、“NOと言わない”ことを基本の姿勢にしています。とはいえ、できること、できないことはもちろんあります。それでもできる限り、NOと言わず、お応えしたいと思っています。ご予約の前にご相談を受けることが多いのが、大切な記念日のサプライズです。お客様のお話しを伺いながら、リクエストにお応えするのが難しい場合は、“こういったことならできますが、いかがでしょうか？”と別のご提案を差しあげて、お客様が納得されるプランをしっかり練っていきます」
特にご相談が多いのがプロポーズのサプライズなのだそう。その年、その日、その時、人生の中で大切なひとときの演出に失敗は許されません。フロント、ルームサービス、レストラン、宿泊など、それぞれの担当者が連携して、お客様とお相手の方のために、世界でたった一つの格別なひとときをつくりあげていくのです。
西谷さんにとって、とても思い出深いリクエストがあるそうです。それは、ある男性のお客様のプロポーズのためのサプライズのリクエストです。まず、お二人でレストランのディナーを楽しんだ後、男性がさりげなく女性を館内の散歩に誘い、そのままホテルのチャペルへ。お二人が入って来られたらスタッフがチャペルに明かりを灯し、男性がセレクトした音楽が流れる中で、女性にプロポーズをする。その後、お二人でお部屋に入るとベッドの上にはバラの花びらをハート型に散らして、その真ん中にブーケが置いてあり、プロポーズは大成功に終わりました。ところがそこで終わりではなかったのです。
「プロポーズの後は、当ホテルで結婚式を挙げていただき晴れてご夫婦に。それから毎年、クラブフロアを訪ねてくださり、その都度、記念写真を撮らせていただくようになりました。新婚時代から、その次はお子様が産まれて、今では3人のお子様に恵まれていらっしゃいます。一番上のお子様はもう高校生なんですよ。みなさん大きくなられて、毎年、お会いして成長を拝見するのが本当に楽しみです。お嬢様がひとりおられて、“パパがママにプロポーズしたこのホテルで結婚式を挙げたい”と言ってくださって、うれしさも倍増しますね」
古くからのお客様ではお付き合いが親子四代にわたることもあるそうで、お正月など大家族で宿泊することも少なくありません。お顔とお名前はもちろん、家族構成などをきちんと頭に入れて、お迎えするそうです。
「何度もご宿泊いただいている方は、目も舌も感性も肥えてこられるので、情報は常にアップデートして、宿泊されるごとに満足度もアップしていただくことを心がけています。一番、難しいのは“いつも通り”のおもてなしをすること。『リーガロイヤルホテルらしい、いつものおもてなしとは何か』をスタッフ一人ひとりが考えて仕事をしていくことが大事ですね」
数多くの国内外の賓客をお迎えしてきた経験を持つ西谷さんは、フロント業務だけでなく、リーガロイヤルホテルグループの接遇インストラクターとして、新人や後輩たちに“接遇”の基本を教えています。
「挨拶、身だしなみ、表情、言葉遣い、態度、これが接遇の5原則です。人に教えるとなると、まず自分がこの5原則をきちんとできていないと教えることはできないので、指導を通して私自身が学ばせていただいています。でも、接遇5原則だけでロイヤルイズムは成り立ちません。基本はやはり、“人”です。そして、その個々の力が合わさり、チームとなって行動することがとても大切だと思います」
どんなに困難なことでも基本はNOと言わずに、リクエストには真摯に、ワンチーム総力戦でお応えしていく。一人ひとりのおもてなしのレベルをアップし、互いに連携しながらチームとしても成長していく。
「どんなに高いハードルを前にしても、一丸となれるまとまりの良さがロイヤルイズムの原点であり、私たちの強みだと思います」。
この矜持こそが皇族をはじめ世界のVIPを魅了する、ゲストへの見事なおもてなしに繋がるのだと思いました。
（文／郡 麻江）
