これはやっぱりリーガロイヤルホテルのプリンだなあ、と思うスクリューキャップのボトル。高級感があり美しい。もらってうれしい。誰かにあげたくなる。けれども、まず自分で味わって「!」と納得してください。(江)
印象的な台形の瓶から、ひとさじすくって口に入れる。滑らかな舌触りで、上品な甘さが口いっぱいに広がる。いぶしたような香りのカラメルソースがマッチしている。味の密度がど真ん中だと思った。
「洋酒それもブランデーが合うのでは」と、左党の私は思わずつぶやく。すると製菓担当課長の河野さんは「それも良いですが、やっぱりブラックのコーヒーがおいしいです」とのこと。
だれもが好きなプリンであり、かつストライクゾーンも広い。
プリンの食材は卵、牛乳、砂糖、そして香りづけ程度のバニラ。シンプルゆえに素材の良さが味を左右する。このリッチな味のプリンは“匠のたまご”大阪・富田林の 辰巳たつみ悦司えつじ養鶏場のものを使っている。湧き水とオリゴ糖配合の飼料を飼育に使い、穏やかな飼育環境の自然で育った鶏の卵は、このプリン自体のおいしいコクを表現している。 地産地消の「大阪もん」であり、府の鶏卵品評会で最優秀賞に輝いた定評がある卵だ。 極限まで卵黄を増やしているとのことだが、卵黄と卵白のバランスなど、どうしても季節や個体差があるゆえに、ホテルパティシエが徹底的にこだわっている。いわば卵の芸術品である。
かたすぎずやわらかすぎず、絶妙の滑らかさ。製菓課に代々受け継がれてきたオリジナルのカラメルソースがアクセントに。
グルメブティック メリッサ リーガロイヤルホテル(大阪) 1階
10:00 〜19:00 TEL 06-6448-2412(直通) 年中無休
(取材・文/江 弘毅)
江 弘毅(こう・ひろき)
編集者・神戸松蔭女子学院大学教授。街の食文化を独自の視点で捉える考察に定評があり、新聞や雑誌などの連載多数。著書に『いっとかなあかん店 大阪』『神戸と洋食』など。最新刊は『問い直しファッション考』。