長年にわたり‟食のロイヤル”たらしめるのは、本場フランスの三ツ星レストランや一流ホテルでの、かけがえのない経験。口福のひと皿に秘められたシェフの想いをお届けします。
「テロワール」といえば、ブドウ畑の土壌や風土のことを指すときに使われる言葉ですが、料理の世界では「土地の特色を生かす」という意味で使われます。私と「テロワール」の出会いは、リーガロイヤルホテルから海外研修制度でフランスに半年間滞在した時のことです。
そこで出会ったシェフたちは、地域で収穫された食材を使い、その魅力を最大限に生かすために全力を注いでおり、「テロワール」が地域の生産者や食文化を守り、持続可能な社会につながるということを教わりました。私が考えていた以上に、「テロワール」は大きな意味を持っていたのです。
また、フランスでは食材や料理に対して良いものは良い、悪いものは悪いとはっきり表現します。さらに職場では年齢での上下関係は一切なく、働いている仲間同士で忌憚なく意見を交換していました。彼らの働く環境や思考から多くのことを学んだことが、その後の料理への向き合い方だけでなく、一人の人間としても大きく成長できたと感じています。
「レストラン シャンボール」では、広島で暮らす人々も知らないような県産食材を見つけて、一流のフレンチに仕上げるのが私の腕の見せどころ。先入観を持たず、フラットな目線を大切にしつつ、さまざまな広島食材との出会いを楽しんでいます。そう思うようになったのも、広島伝統野菜「祇園パセリ」との出会いからです。
レストランの厨房の冷蔵庫を開けると、濃い緑でモッコリとした形の野菜があったんです。一葉一葉が細かく縮んでいて、パセリのようだけどパセリじゃない…? これは何だ?と(笑)。パセリだと知って驚き、その香りや柔らかさにさらなる衝撃を受けました。その後、広島食材を巡るツアーにも参加し、広島サーモンや真魚まな鰹がつお、女め鹿が平ひら高原の“女鹿平 香り舞茸”、“女鹿平 あわび茸”、分葱、小松菜…多彩な食材を知ることができました。それぞれに個性があり、その個性を生かした料理へのインスピレーションを与えてくれます。例えば広島サーモンなら、さっぱりとした身が特長ですから低温で火入れをして、とろけるような食感に、真魚鰹は、まだ鱗が付いているほど鮮度が高い状態で仕入れられるので、新鮮さを生かした一品に、とさまざまなアイデアが浮かんできます。次は、小松菜を使いたいと思っていて、サラダで食べられるほどの柔らかさを生かした調理ができないかと考えています。
「広島テロワール」では、広島の豊かな自然を表現するだけでなく、お客様にサプライズをご提供することを大切にしています。地域の生産者の方々、自然の恵みに感謝をしながら、私らしい「広島テロワール」の世界を追求していきたいですね。
リーガロイヤルホテル広島 レストラン シャンボール シェフ 春田 義彦(はるた よしひこ)
1999年3月リーガロイヤルホテル(大阪)入社。フランス三ツ星レストラン「オーベルジュ・デュ・ヴュー・ピュイ」「ル・ムーリス」で修業。「レストラン シャンボール」スーシェフ、「くろよんロイヤルホテル」シェフを経て、2022年4月リーガロイヤルホテル広島の「レストラン シャンボール」「スカイダイニング リーガトップ」シェフに就任。お客様に喜んでいただける料理作りや努力を惜しまない姿勢、後輩への技能伝承などが高く評価され、2013年11月「なにわの名工若葉賞」を受賞.
リーガロイヤルホテル広島
レストラン シャンボール
TEL 082-228-5473(直通)
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※ご利用は中学生以上とさせていただきます。
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