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王道に勝るものなし「ロイヤルショートケーキ」。

男もすなる「おもたせ考」 ロイヤルショートケーキ

ロイヤルショートケーキ ​

「あ、イチゴ。」

 このケーキを見て思い出したのは、兵庫県農協経済連のポスターだ。20年以上前(まだJAと言ってなかった)、神戸のデパートの地下の生鮮食料品売り場で、思わず注目したものだ。地元兵庫県産のイチゴを売っているコーナーに張られていた。白地にとてつもなく大きく引き伸ばされた真っ赤なイチゴの切り抜き写真と、そのコピー「あ、イチゴ。」だけが印刷されたポスター。すごい迫力だった。

 リーガロイヤルホテルのこの「イチゴのショートケーキ」は、そういった「イチゴ感」にあふれている。もちろん「お見かけ通りの味」で、ダントツにおいしい。

 「イチゴがおいしくないとダメです」とは製菓課の河野 竜彦さん。なので産地指定にこだわらず、季節とそのときの天候なども見極めて、ベストなものを取り寄せて使用。

 写真の断面でおおよそ伝わっていると思うが、ケーキの上の段は4分の1にカットしたもの、そして下の段はスライスしたものを敷き詰めている。

 すごいなあ、一体、何個分使われているのだろう、などと思う。実際にメリッサの店頭に並ぶピースは、6寸(約18cm)のホールを8等分に切ったもので、半径約9cmで高さは6.5cm。どこをカットしても同じ断面になるようにイチゴをレイアウト。プロの技である。

イチゴのロイヤルショートケーキは5月中旬まで。その後は旬を迎えるメロンのロイヤルショートケーキを販売予定。

 風味を決定づける生クリームは、約半世紀前にこのホテルにいた、フランス人パティシェの伝統を受け継ぐものの、試作と試食を繰り返してさらに進化させ、3種をブレンドしている手の込みよう。口溶けの食感もフレッシュそのもの。また、これも伝統のスポンジは、シロップを加えたイチゴのリキュールをハケで塗ってしっとりさせている。なるほどイチゴ感の演出に抜かりない。

 どこの店でも目に入るイチゴのショートケーキは、誰かのために買うケーキをあれこれ選ぶ際に、選択肢の中に絶対入ってくるが、リーガロイヤルホテルのこれは、「定番にちがいない」けれど、「イチゴを堪能するため」のスペシャルでもある。

 ストレートの紅茶でもブラック・コーヒーでも過不足はないが、シャンパンなども試してみたくなる。おもたせ先でパッケージを開けた際に「あ、イチゴ。」の声に、そういうグルメな話題で応じたくなる存在だ。

おもたせ

グルメブティック メリッサの「ロイヤルショートケーキ」

¥950(1個)

(取材・文 / 江 弘毅)

江 弘毅(こう・ひろき)

編集者・神戸松蔭大学教授。街の食文化を独自の視点で捉える考察に定評があり、新聞や雑誌、WEBなどの連載多数。著書に『いっとかなあかん店 大阪』『神戸と洋食』『問い直しファッション考』など。

グルメブティック メリッサ

リーガロイヤルホテル大阪

ヴィニェットコレクション 1階

大阪市北区中之島5-3-68

TEL 06-6448-2412(直通)

10:00~19:00 年中無休

※料金はすべて税金・サービス料金を含みます。

※写真はイメージです。

※メニュー内容は季節・食材の入荷状況等により変更する場合がございます。

※状況により、営業内容を変更する場合がございます。ご利用の場合は事前にご確認ください。

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