1935年、「大大阪」あげてのプロジェクトとしてリーガロイヤルホテルの前身となる「新大阪ホテル」が誕生しました。以来、長きにわたり国内外のVIPを迎えてきた同ホテルの館内には、英国の陶芸家・バーナード・リーチが「民藝」の思想をもとにデザインを手がけた「リーチバー」や、日本庭園を望む「メインラウンジ」など、「日本の伝統美」が随所に取り入れられています。
2024年から1年以上をかけて大規模改装を行い、90周年を迎えた2025年、IHGホテルズ&リゾーツのコレクションブランドである「ヴィニェット コレクション」を導入し、「リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション」として新たなスタートを切ります。
今回、「歴史を尊重しつつ新たな風を呼び込む」をテーマにどのような改装がなされたのか、総支配人の中川 智子さんにお話を伺いました。
総支配人 中川 智子
リーガロイヤルホテル大阪の前身である「新大阪ホテル」は、「賓客のための近代的ホテルを大阪に」という大阪政財界の要望を受けて1935年に誕生。2025年1月16日に創業90周年を迎えました。これからも企業や個人のお客様のご期待にお応えしながら成長する、地域に根づくホテルであり続けるために、IHG ホテルズ&リゾーツのコレクションブランドのひとつである「ヴィニェット コレクション」を導入。当ホテル独自の特長や展望を生かしつつ「旅を通して世界の人々やコミュニティに貢献する」という共有ビジョンのもと、今春に「リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション」としてリニューアルオープンします。
「2025年は90周年という節目を迎えるとともに、『大阪・関西万博』開催という記念すべき年です。これからも歴史を継承しながら、さまざまなかことにチャレンジしたいです」と話す中川 智子総支配人。
総額135億を投じる大規模リニューアルの実施に当たり、私たちは外部のデザインチームとの打ち合わせを重ねました。そのなかでクリアになったのは、日本を代表する建築家・吉田よしだ五十八いそや氏が築き上げた「日本の伝統美」を取り入れた和洋折衷のレガシーや歴史、これまで培ってきたアイデンティティを最大限に尊重すること。また、2つの川に挟まれた水都大阪の中心地・中之島に建つホテルならではの水や川との関係性を軸に、時代を越えて愛される宮殿のような空間を作り上げることでした。導き出したキーコンセプトは「伝統美と水の融合」。大正時代から栄えてきた中之島に浮かぶ、グローバル基準の設備とおもてなしを兼ね備えたラグジュアリーホテルが誕生します。
90年に亘る歩みのなかで改装を繰り返してきましたので、客室はフロアによってコンセプトがバラバラでした。趣が異なる部屋に泊まれることが楽しいと仰っていただけるお客様がおられた一方、グループでご利用いただく時には少し使い勝手が悪いという意見も頂戴しておりました。そこで、今回の改修では全室を同じコンセプト「タイムレスクラシック」で統一。受け継いできた伝統はそのままに、グローバル基準を満たすホテルとして世界からいらっしゃるお客様の満足感をキープする客室にリニューアルしました。このコンセプトには、時代や環境が変わっても、心地良いクラシックな空間であり続けたいとの思いも込めています。
ヨーロピアンクラシックの歴史を継承した客室は、心から寛げる上質なひとときをご提供いたします。書家・川尾朋子さんの水墨画のヘッドボードは墨の濃淡や滲み、かすれなどで細やかな表情を生み、水面の動きや力強さ、立体感などを表現しています。
2部屋分のシングルルームを1室にして、バスルームだったスペースをウォークインクローゼットにするなどの改装も一部で行い、総客室数は1039室から1001室に。客室のベッドをIHGラグジュアリークラスの基準であるシモンズに変更しました。以前はツインルームが主でしたが、外国からのお客様が増えることを予測して、ダブルルームの比率を高めています。
客室のカラースキームは、当ホテルのコーポレートカラーであるロイヤルグリーンが基調。絨毯は水のゆらぎをモチーフにしました。IHGならではの表現は、差し色としてスモーキーピンクの調度品やファブリックを配しているところです。今までとはひと味違うカラースキームもご堪能いただけます。ヘッドボードには、書家の川尾朋子さんによる水の躍動感を表現した水墨画をあしらいました。外国からのお客様に日本を感じてもらえるアイテムにもなっています。
客室階の廊下やエレベーターホールに敷き詰めた絨毯は水面に映る月の揺らぎを表現。月をイメージした壁面の金属製アートも含め、お泊りいただくフロアに着いた瞬間から、水の存在を感じつつお過ごしいただけます。
客室には、ワインやエスプレッソマシンを揃えたミニバーを設置。
特長的な変更点はミニバーです。近年、日本のホテルはオペレーションの簡素化に動いていて、客室内の冷蔵庫を空にしておくことがスタンダードになってきています。けれども、長旅を経て到着されたお客様ご自身に飲み物を用意させるのは世界水準のホテルとしてはふさわしくないと判断し、全室にボトルワインやグラス、エスプレッソマシンを備えたミニバーを設置しました。ドリンクは一般的なラインアップに加え、大阪名物の缶入りミックスジュースと瓶入りのラムネもご用意。笑いの都でもある大阪らしい遊び心を添えました。4月からは24時間オーダー可能なルームサービスもスタートする予定です。世界のラグジュアリーホテルの水準をしっかりキープしてまいります。
62室のみのクラブフロア「ロイヤルクラブ」では、最高級のクオリティによるおもてなしで、上質なひとときをお過ごしいただけます。
イーストウイング 23~27 階までのフロアに位置する、全62室のクラブフロアをご利用いただくお客様専用のロイヤルラウンジも装いを一新。大阪市街を一望できる開放感はそのままに、木材や革、銅板などを配し快適に過ごせるスペースを拡張。朝食からアフタヌーン、イブニング、新しく設定したカクテルタイムなど時間帯に応じたお飲み物や軽食でお寛ぎいただけるようになりました。
これまでの重厚感ある雰囲気から明るく開放的な空間へと変わり、ゆったりと寛げるソファー席を充実させました。ライブラリーでは多彩なラインアップの書籍をお楽しみいただけます。
バーカウンターを新設し、イブニングとカクテルタイムには、約20種類のアルコールやマスターバーテンダーが考案したオリジナルノンアルコールカクテルをお楽しみいただけます。
朝食から日中のデザートビュッフェ、夜はバーやラウンジとしてもご利用いただける「オールデイダイニング リモネ(REMONE)」は「Restaurant Mix Old&New」の頭文字を並べた造語です。今回、エントランスから全面的にリニューアルすることを受け、店名の変更も考慮しましたが、日本の伝統柄や伝統色(Old)を新しい素材や手法(New)でMixするRestaurantと読みかえ、店名と共にオープン当初の精神を受け継ぎました。
日本庭園に面した大きな窓から自然光が降り注ぐ広く明るい店内の「リモネ」。
植栽を新しくした日本庭園に面したウッディな店内には、自然光がたっぷり降り注ぎます。外国からのお客様が好まれるテラス席、小さいお子様をお連れのファミリー層にゆったりご利用いただけるソファーも増席しました。アラカルトをゆっくりお召しあがりになりたいお客様のためにエリア分けも実施。このスペースは個室としてのご利用も可能です。
朝食時の混雑を緩和するため、ビュッフェラインを変更。ホット料理とデザートコーナー、コールドコーナーにそれぞれのカウンターを設けて、アイランドを3つに分けました。その手前にあるホットドリンクのコーナーでは、係がお客様の注文を伺って温かいお飲み物をご用意します。
「リモネ」から小橋を抜けた先に広がるのは、洞穴のような、宇宙船の中のような、幻想的な円形空間「ラ・ロンド」。中心に天井とひと続きになった朝顔型の柱がそびえ、その表面は細かいガラスタイルが紫のグラデーションを描いています。
「リモネ」店内と橋に見立てたアプローチで繋がる「ラ・ロンド」は、バーナード・リーチの意向を取り入れて吉田五十八氏が意匠設計した円形空間です。約50年前の作品とは思えないほどモダンなスペースで、今回のリニューアルでテーブル席をソファーにチェンジしましたので、バー感覚でゆっくりお過ごしいただけます。音響設備も整えたので、今後はディスコパーティなども開催予定です。
メインロビーの床一面に敷かれた日本最大級の豪華絢爛な大緞通「万葉の錦」は、歴史に敬意を表してそのまま継承。艶やかな鳥模様金蒔絵が施された柱は2面を残し、もう2面にはグレーンペンミラーを設置し、周囲の景色やレセプションを映しこみ、空間の繋がりをつくるよう意図しています。
ホテルの顔とも言うべきロビーは、正面玄関からメインラウンジ、さらに奥の滝に向かって続く当ホテルを象徴する景色を最大限に生かした改装を行いました。なかでもオリエンタルカーペット製作の日本最大級の大緞通「万葉の錦」はまさに当ホテルのレガシーを継承しています。現在の物は、85周年の際に新調し初代の紅葉柄をよみがえらせた緞通ですが、その際、時代の流れに合わせてパターンのサイズを1.3倍にしました。
新たに設置したレセプションは約1,000室のお客様をスムーズにおもてなしできるよう、従来の位置からセットバックさせ、ゆとりのある空間を設けました。
レセプションの正面の壁には、西陣織の老舗『HOSOO』によるオリジナルの屏風を飾り、お客様をお出迎えします。
レセプションは、1000室分のお客様をスムーズにお迎えできる動線を実現するため、従来の位置から大幅にセットバック。ゆとりのある空間に生まれ変わりました。その足元を彩るのもオリエンタルカーペットによって新調した絨毯です。全体的に淡い色調ですが、実は「万葉の錦」と同じ、オレンジやイエローなど14色のグラデーションで構成されています。
正面の壁には、その前に立つ人を引き立たせる西陣織の屏風を備えました。これは、今、世界でも注目されている西陣織の老舗「HOSOOほそお」のオリジナル作品。立体織物の卓越した伝統技術と西陣織ならではの豊かな質感で、中之島の発展に大きな影響を与えた水を表現していただきました。メインロビーはスモーキーピンク系、会員専用カウンターはブルー系のカラーリングでゾーン分け。模様は変えずに統一感を出しています。
会員専用のカウンターでは、ゆったりと座りながらチェックインをしていただけます。正面の壁には、“ふくらし織”の伝統技法を用いた西陣織の屏風が飾られ、雄大な水の躍動感を表現しています。
90年の長きに亘り、関西を代表するホテルとして愛され続けるリーガロイヤルホテルでは、次の節目となる100周年に向けて、さまざまな取り組みが始まっています。これからもスタッフ一同、おもてなしの気持ちに磨きをかけ、変えるべきところはどんどん変えながら、伝統や居心地の良さをそのままに、お客様お一人おひとりにとって特別な場所であり続けます。
リーガロイヤルホテル大阪
TEL 06-6448-1121
大阪市北区中之島5-3-68